◆暁ドラマ◆

□IF<第五章:永久の契約>
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足を進めるごとに血の臭いが徐々に増し、少し開けた森に出た瞬間、凄惨な光景が眼に飛び込んできた。
もはや誰かも分からない程バラバラに切り刻まれた多量の死体が地面に散乱し、奥を見やるとご丁寧に幾十もの人の頭部が積み重ねられている。
その山積みにされた生首達はどれも綺麗に顔を残していて、馬鹿なりに気を遣って換金できる状態にとどめた事が伺い知れ、角都は満足げに薄い笑みを浮かべた。

血の海と化している地面に横たわり、例の如く長々と祈りを捧げる飛段の元へと歩を進め、
「少しは苦戦しているかと思ったが・・・いらん心配だったな」
と声をかけ、自分の世界に浸っている飛段の顔を見下ろす。
その言葉に飛段は眼を閉じたままゆっくりと口を開き、
「当たり前だ・・・俺にはお前に貰った最高の武器があるんだぜ。こんなカス共にやられる訳ねえだろ。きちんと43人分、揃ってるからな・・・賞金は全額頂きだ・・・」
と静かに返した。
その飛段の姿をまじまじと見つめ・・・角都は苦い顔を向けた。
「また服を駄目にしたな、全く。儀式の度に使い物にならなくしていては、幾ら稼いでも金が貯まらんではないか。少しは考えろ」
「今回はこいつらにやられたんだ、俺のせいじゃねえっての・・・」
そう弁解した飛段の服はもはやただのボロ切れのように引き裂かれ、合間から黒く変色した肌が露になっていて、角都は昔の事をふと思い出し眉間に深い皺を寄せた。
雰囲気で角都の様子を察したらしく、飛段は眼を閉じたまま言葉を付け足した。
「いっとくけど、こんな糞野郎共にヤられるような俺様じゃないぜ・・・」
身動きせず横たわる飛段の様子に、
“まだまだ祈りを続ける気だな、コイツは”
と判断した角都は、
「上出来だ」
と呟くと、賞金首達の頭部回収に着手する事に決めたのだった。



自分が仕留めた盗賊の頭が1000万両、その部下43人は額もそれぞれだが塵も積もればなんとやらで、1000万両は下らない。
この程度の仕事で2000万両手にできるとは、実にいい仕事だったな、と角都は機嫌良く頭を大きな麻袋に放り込み、しっかりと紐で口をくくった。
そして、さっさと行くぞとばかりに着ていたマントを飛段の上に放り投げ、盗賊の頭の死体を片手で担いで、先ほど用意した麻袋を飛段の傍にどさりとおろした。
まさしく“無言の威圧”である。
飛段も流石に身を起こし、小さく溜め息をつくと
「俺に持てって事だよな・・・別にいいけどよぉ」
と悪態をつき、しばし考えるように麻袋を眺めると、角都を見上げた。
「後どれくらいで8000万両達成すんの?」
「・・・1500万両そこそこ、といったところだろう。大物を後1、2人捕まえれば晴れて自由の身だな。・・・嬉しいだろう?」
角都はマスクの下に薄い笑みを浮かべ、踵を返して最寄りの換金所へと足を向けた。
離れて行く背中を追うように飛段はゆっくりと立ち上がり、麻袋を担ぐと小さく呟いた。
「・・・ああ、そうだな・・・」
その顔に、笑顔は無かった。
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