◆暁ドラマ◆

□IF<第三章:白銀の死神>
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飛段は角都の用意する朝食の香りで目覚めた。
まさに最高の目覚め、昨日とは天地の差である。
「おはよ〜角都。超〜いい匂いする!おぉ!ハムじゃねえか!」
飛び起きるや角都の背中ごしにフライパンの中身を覗き込み、飛段は耳元ではしゃぎ声をあげた。
角都はジロリと横目で飛段を睨み付けると、
「うるさい、耳元でデカい声を出すな。もうすぐ焼ける・・・先に顔を洗って来い」
と不機嫌な声を出したが、飛段は特に気にする様子もなく、
「はいはい」
と子供のように水場へと駆けていった。

その背中を見送りながら、
“気分は晴れたか。余計な気遣いは不要だな・・・”
と、角都は密かに笑みを浮かべたが、戻って来た飛段には、
「そら、出来たぞ。しごきに耐えられるようにしっかり食っておけ」
とあくまでも真顔&冷たい声で出迎えた。
自身の中で受け入れる覚悟が出来たとはいえ、性分で素直に優しくはなれない角都であった。



食事を済ませると、角都は飛段を武器保管室へと連れていった。
物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡していた飛段だったが、目の前に真っ赤な三連鎌を振りかざされた瞬間、その眼は目新しいそれへと釘付けとなった。
鎌を受け取り、隅々までなめるように視線を這わせる。
そして、感動でキラキラ輝くピンクの瞳を角都に向けた。
「すげぇっ・・・!真っ赤で鎌がいっぱいついてて超!カッコイイじゃねえか!これ、マジでくれんのか?」
興奮気味な声をあげる飛段に、角都は薄い笑みで返す。
「それはお前次第だ。その鎌は妖刀だからな。主と認めない人間には力を貸さん代物だ。身体の一部と呼べるレベルで扱えるようにならなければ返して貰うぞ」
「そっか。それなら安心だな!」
「ほぅ。随分と自信があるようだな。己をあまり過信しない方がいいぞ」
角都の言葉に、飛段は満面の笑みで答えた。
「俺なら使いこなせると思ったからコイツをくれるんだろ?角都がそう思ったんならぜってぇ大丈夫だ。俺はお前の勘を信じるぜ!」
角都は、むぅ、と小さく唸り声をあげたが、それ以上は反論せずクルリと踵を返し、一言、
「行くぞ」
と呟いて早足で歩き出した。

その後を小走りで追いかけ、飛段はニヤニヤとした笑みで、
「なんだよ、もしかして照れてんの?結構可愛いとこあんじゃねえか」
と角都の顔を覗き込んだ。
角都の顔に青筋がたったことは言うまでもなく、口からはお決まりのような一言が発せられたのだった。
「うるさい黙れ。それ以上何か言ったら殺すぞ」
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