◆暁ドラマ◆

□IF<第2.5章:堕ちたのは・・・>
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ほのかに漂いだした甘い香りが徐々に心拍数を落ち着かせていく。
ゆっくりと深呼吸して高い天井を眺めれば、色んなものが混ざってぐちゃぐちゃになった頭の中が青く染まって・・・
最後に角都の言葉が水滴のように心の中に落ちて静かに波紋を作った。


“悪かった・・・”


なんで謝られたんだろ・・・
勝手にパニック状態になっちまっただけだし・・・俺が悪いんじゃねえの?
頭の中を疑問符だらけにしていたら、不意に視界に角都の顔が現れた。相変わらず眉間に皺を寄せて。
「いつまでそうしているつもりだ。服の着方から教えなければならんのか?」

そう言えば、服を投げてよこしてくれてたんだっけ。
忘れてたとか言ったら殴られそうだ。
ん〜・・・それは黙っとくか。
「いや・・・流石にそこまで馬鹿じゃねえよ」
それだけ言って身体を起こし、適当にタオルで身体を拭いて服を着たら、目の前にホットミルクが差し出された。
軽く礼を言って受け取り口をつける。
「あったけぇ・・・」
無意識に言葉が口をついて出た。今更だけど、結構身体が冷えてたらしい。
角都は、俺の方を見ると淡々とした口調で言った。
「明日から特訓に入る。しっかり休んでおけ」
「特訓・・・?」
首をかしげて聞き返せば驚きの答えが返ってきた。
「お前にとっておきの武器をくれてやる。身体の一部になるまでここからは出られないと思え」
・・・・!!
く、くれてやるだと!売ってやるじゃねえの?!
俺の中のテンションが一気に上がった。
「お、おい!マジかよ!何くれんの?刀か?」
角都は眼を細め、
「それは見てのお楽しみだな・・・」
と薄い笑みを浮かべた。
(余談だが、マスクの下は意外と男前な顔立ちだ。縫い傷を隠すため着けてるんだろうが、素顔の方がモテるんじゃねえの?といつか言ってやりたい)
「ハァ?何だよ、いいじゃねえか、教えてくれてもよぉ。角都のケチ!」
駄目元で食い付いてみるも・・・
「ケチ臭いのは今始まった事じゃないだろう?」
と一蹴されてしまった。
「む・・・それはまあ、そうだな」
頭を掻きつつ同調し、空になったコップを笑顔で返した。
「ごちそ〜さん!」
角都はそれを無言で受け取り、後ろを顎で示した。
「もう寝ろ」
その方向には角都が新調したと思われるフカフカの布団が一式。
自分が寝ていた方向には、穴があちこちあいた血塗れのせんべい布団が。
事情はよく分からないが、どうやら俺は布団を駄目にしてしまったらしい。
「あれってお前の布団じゃねえの?」
その問いに、角都はヤレヤレというような顔をして
「今夜だけ諦めてやる」
と言い放った。
上からもの言いやがって!と言いたいところだが手間をかけさせまくった手前、口が裂けても憎まれ口は叩けないので、素直に好意として受け取っておく。
「ふ〜ん。何か悪いなぁ・・・」
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