◆暁ナルト劇場◆

□溶け合う心臓
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新たな連れをあてがわれて早三ヶ月が経つ。
“相方殺し”呼ばわりされている俺からすれば、もっている方だろう。不本意だが、記録はまだまだ更新されるに違いない。
新しい連れは“不老不死”の能力を持っていて首をはねても死なないのだ。
そのまま放置してやりたくなる事は多々あるのだが、あの糞真面目なリーダーの事だ、生きたまま放置すれば、仲間への裏切りとみなして 制裁対象にめでたく認定されるだろう。
そんな面倒事は御免だ。
よって、今日も連れは俺の隣に存在し続けている。



森の夜は静かだ。
たまに梟や獣達の声が響き渡る位で、後はパチパチと燃える焚き火の音と、猫のように身体を丸めて眠っている連れの寝息だけが耳に響いている。
親子どころか孫ひ孫ほど歳の離れたこの相方の名は飛段という。
3ヶ月も寝食を共にしていれば嫌でも人間像が見えてくるもので、この男の事は大体見えてきていた。
第一印象と変わらず頭は悪く、知識にも知恵にも欠けていて、危なっかしい事この上ない。
人はこれを“純粋”と表現するかもしれないが、こやつの豹変した姿を見ればそんな絵空事は口に出来ないだろう。
長く生きてきた俺ですら驚愕を覚えたのだから・・・


普段は子供のようにすぐに拗ねたり怒ったり、かと思えば何か楽しめそうな事を見つけては舌足らずな口調で無邪気な笑みを浮かべながら話かけてくるくせに、いざ戦闘となると気が狂ったように大鎌を振り回し、品の無い笑い声をたてながら儀式と称して人を嬲り殺しては相手の痛みを感じる快感にふけり長ったらしい祈りを捧げる姿は、同一人物とは思えない位のものだ。
(まあ、そもそも犯罪者と呼ばれる人間にまともな奴などいるはずが無いのだから驚くには値しないのだろうが)
しかし、それでも今までの連れの中では一番気を張らずに行動出来る奴だ。
どれだけ言い争っても殺意を感じた事が一度も無いからというのと、単に裏切るとか寝首を掻くとかいった謀が出来る程の頭が無いからというだけの理由ではあるが。
(但し、今までの連れの中で一番煩い男でトラブルが多いのも事実だ。はっきり言って何度殺したか気がしれない)

たまに危うく気を許しそうになる瞬間すら訪れるようになってしまったが、そんな時は自分の中の理性が叫び声をあげてくれる。
「他人を信じるなんて馬鹿げた行為はやめておけ」と。
そうだ。
コイツには隠し事がある。コイツも俺を100%信用している訳では無いのだ。
そう思うと、だんだんコイツが何も考えていない馬鹿を装っているようにすら見えてきて・・・疑念は尽きない。
“単純”
“純粋”
どれも見立て違いだ。
お前にはそう評されるに必要な要素が徹底的に欠けている。

何故。
何故。


・・・お前は哀しまない・・・?


鋭く殺気を込めた眼で睨み付けたところで、規則正しい寝息は止まない。俺を信じているとでも言いたいのか?笑わせる・・・

哀しみに・・・苦痛に歪まないお前の端整な顔を・・・俺は信じない。
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