◆暁ファミリー話◆

□その6:BEST ONE
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「ハァーッ!なんでオメーと一緒に出かけなきゃなんねえんだよぉ!角都とじゃなきゃ俺は行かねえぞ!!」
リビングに飛段の不満に満ち満ちた声が響き渡る。
暁に敵対の姿勢を示した下級マフィアのアジトをせん滅する、という約3日間のスタンダード任務を角都と飛段でこなす予定だったのだが、出発直前になってトビが2人をひきとめ、
「査定の時期だったのを忘れていた。突然だが、例年通り一人一人仕事を見せてもらう事にする。角都、交代しろ」
と言い出したのが始まりだった。


無法集団にも見える暁だが、一端の会社らしく給与は査定によって半年毎に変動する規則になっていて、表の仕事の収入状況に加え、裏の仕事の勤務態度や能力などを組織のトップであるトビが観察し、残り半年の給与額を決定するのだ。
「飛段、今回だけだ。黙って従え」
角都は諭すようにふてくされている相方に声をかけた。しかし、飛段におとなしく従う様子は毛頭なく、トビは一つ大きな溜め息をついた。
「やれやれ。分かってはいたが、とんだ問題児だ。ちゃんと躾けろ、角都」
そう言ってトビはジロリと角都を睨みつけてから、飛段に向き直った。
その眼力に飛段は一瞬怯んだ。
「な、なんだよ・・・!」
「飛段・・・俺の眼を見ろ」
飛段は思いきりトビを睨みつけたが、それは一瞬だった。ハッと息の詰まるような声をあげ、ビクリと身体を震わせると飛段は先程迄の抵抗が嘘のように静かになった。
トビは満足そうな笑みを浮かべ、
「では、行くぞ、飛段」
と声をかけた。
その様子を見守っていた角都は、何やら瞳術をかけた事には気付いたものの、飛段から出た言葉に思わず唸り声をあげた。
「おう、早く行こうぜぇ、角都」
「・・・!!トビ、貴様まさかっ!」
「お前としか行かんと言い張ってるんだ。仕方あるまい。この時点で早速減点だな、使い勝手が悪過ぎる」
先程までの余裕はどこへやら、微かに殺気を含んだ眼で角都はトビを睨みつけた。
だが、トビはくっくっくと楽しそうな笑い声を立て、
「そう怒るな。心配せんでも手を出したりせんよ。こいつが襲ってきたら返り討ちにしてやるがな・・・」
と言い残すと角都に背を向け、玄関先で早くしろと喚いている飛段の元へ歩み寄り、肩を並べて扉の向こう側へと姿を消したのだった。
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