◆暁ファミリー話◆

□その6:BEST ONE
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残された飛段と角都は、改めて互いに顔を合わせた。
「で・・・いつ気づいたんだ、飛段?」
角都は平静を取り戻し、ふてくされている飛段へ問いかけた。飛段は少しバツの悪そうな顔で俯き、角都の顔色を伺うように上目遣いで答えた。
「・・・その・・・キスが・・・違ったんだよ・・・下手だったから・・・」
角都はきょとんとした顔を向け、おかしくて堪らないとばかりに笑い声をあげた。
「くくくくく・・・そうか。まさかそんな事で正体を見破るとはな・・・で」
角都はそこまで言って真顔に戻り、飛段の肩をがっしりと掴んだ。
「アイツとしたのはキスだけか?」
角都の刺すような眼に飛段は首をぶんぶんと縦に振った。
「あ、あたりまえだっ!てかそれ以外のコト元々お前とやった事ねえだろうがっ!それにトビだって分かってたらキスだって・・・その・・・悪かったよ。浮気なんてしてないからなっ!」
必死に弁解する飛段が愛おしくなり、角都はその場で飛段を抱きしめた。
「分かっている。キスぐらい構わんさ・・・家族同士なら当たり前の行為だからな」
「へへ・・・なあ、角都ぅ・・・今夜付き合えよ・・・」
「・・・仕方ないな」


幸せな時間が流れる角都達とは対照的に、トビとゼツの間には重々しい空気が流れていた。
トビは不機嫌そうに服を脱いで椅子に投げかけ、そのままベッドに身を投げ出した。
「トビ・・・何かあったの?」
「聞くな・・・自分の部屋に戻れ、ゼツ」
冷たくあしらわれ、ゼツはしゅんと項垂れた。追い打ちをかけるように。黒ゼツが白ゼツをたしなめる。
「ホラ、行クゾ」
「でも・・・」
せっかく三日ぶりに会えたのに・・・白ゼツの脳裏に先日の出来事がよみがえる。
“角都は飛段にするように優しく頭を撫でてくれて・・・キスを・・・キス?もしかして・・・”
白ゼツは黒ゼツの制止を振り切って身体を動かし、トビのベッドへとゆっくり上がった。
トビは不機嫌そうな眼でゼツを睨みつけたが、ゼツはそれを受け止めるように吸い込まれそうな金色の眼で見つめ返し、ぽつりと呟いた。
「キス・・・したの?それでばれちゃったの、トビ?」
図星だったトビは大きく眼を見開いた。
「・・・なぜお前にそんなことが分かる?!」
「角都が言ってたから・・・ずっと触れ合っていたら相手が変わると違いを感じるんだって・・・」
「・・・角都の奴。余計な事を・・・」
トビはバツが悪そうに眼をそらしたが、ゼツはくすくすと笑うとトビに抱きつき、確かめるように胸に顔を擦り寄せた。
「飛段には角都が最高の相手なんだから・・・トビじゃ敵わないよ。でも、僕にとってはトビが一番だよ・・・それじゃあ駄目なの?」
トビは飾らない素直なゼツの言葉に張りつめていた心の糸をぷつんと切られ、大きく溜め息をついた。
「そうだな・・・お前の言うとおりだな。八つ当たりしてすまなかった。・・・今夜は泊まっていくか?」
「・・・うん」
「勝手ニシロ・・・」


かくして二つのコンビは無事元の鞘に治まり、それぞれが幸福な時間を過ごしたのだった。
<END>
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