◆暁ファミリー話◆

□その4:無条件の愛を
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どの位そうしていたのかは分からない。
しかし、頬を撫でられる感触に角都は現実へと引き戻された。
「飛段・・・」
「ひでぇ顔してんなぁ、角都・・・」
その声は聞き慣れない弱々しい響きで。
しかし見慣れたピンクの瞳は強い光をたたえ、まるで捕らえるように見据えていて・・・
角都はただ黙って視線を相方へと向けた。
飛段は角都の様子に満足そうな笑みを浮かべ、
「全く・・・たまには俺の言う事も聞けっての・・・少しは反省したか?」
と不釣り合いな悪態をついた。
「煩い・・・お前がちゃんと理由を説明していれば・・・こんな事にはならなかったはずだ・・・」


角都は絞り出すように反論したが、口にしてすぐに苦し紛れの言い訳だと密かに自嘲した。
異変を感じた時にすぐ確認すればよかったのだ。
飛段はきっと、気づいて欲しかったはずだ。
なんと言っても世界で一番ワガママな男なのだから。


「俺がわざわざ説明してやる賢い人間に見えてたのかよ・・・ばぁ〜か・・・痛っ・・・」
案の定小馬鹿にしたように小さく笑い、痛みが走ったのか顔をしかめた飛段の頭を、角都はそっと撫でた。
そして、少し悩むように眼を逸らし、諦めたかのような溜め息を一つ、静かについて・・・
ペインに任された論題を口にした。
「飛段、お前・・・不死の能力を維持するのに儀式が必須だったのか。どの位の頻度行えばいいんだ?」
飛段は少し考えるように天井に眼を向け、考えるように眼を閉じたまま答えた。
「俺にもよくわからねえ・・・けど、3ヶ月以上空けると少しづつ再生が遅くなっていく感じがしてくるような気がする・・・とっ捕まってた時は、時間の間隔があまりなかったからはっきりした事は言えねえけど、半年に一回は儀式をやらせてもらえてたと思うんだ・・・だから今回は絶対に贄を捧げないとヤバいと判断したんだが・・・クク・・・半年じゃあ遅かったな・・・俺・・・ようやく死ねるような気がするぜ・・・」
力なく笑う顔がたまらなく胸を締め付け、角都はたまらずその青白い顔を撫でた。
少し驚いたように眼を開けた飛段の顔を覗き込み、口を開いた。
普段ならば絶対に口にしないような言葉がぽつりぽつりと零れていく。
「馬鹿を言うな・・・すぐに儀式用の標的を連れて来てやる。俺の許可無しに死ぬなど絶対に許さん。・・・絶対にな・・・」
「角都・・・」
角都の言葉に飛段の顔が泣きそうに歪み・・・

泣いているような。
笑っているような。

そんな顔で、飛段はお返しとばかりに角都の顔を軽くぺしぺしと叩き、照れ隠しのような悪態で返したのだった。
「はいはい・・・分かったよ。早いとこ頼んだぜぇ・・・治ったらまた俺に付き合ってもらうからな・・・覚悟しろよ・・・かぁくずぅ・・・」

<END>
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