◆暁ファミリー話◆

□その4:無条件の愛を
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「俺達を使うとは。高くつくぜ?」
「まあ、今回は特例だな、うん。オイラは粘土10kgで大丈夫だぞ、角都」
暁ホームのリビングにサソリとデイダラの調子のよい声が響き渡る。

異常事態と判断した角都はすぐにペインに連絡をとった。それで家で作品制作にいそしんでいたサソリとデイダラが急遽現場へと向かうことになり、死体回収と角都と飛段の回収に向かわされた二人は時間外労働だと、報酬をせがんでいるのだ。
「ふざけてる場合じゃ無いぞ、お前達!」
ペインの一言で二人は大人しく口をつぐむ。
普段、大人しくしていない二人だが、飛段が絡むと角都は弱い事は百も承知。
今回の「非常勤手当」は必ずや支払われるだろう、と二人は確信し、各自大人しく部屋に戻って行ったのだった。


二人の背中を眼で送り、ペインは視線を向かいのソファーで眉間に皺を寄せたままの角都へと戻した。
「・・・と言うことは、飛段の不死の能力は限定的という事なんだな?」
「推測の域をでないが・・・アイツの再生能力が落ちているのは確かだ。この世に無条件の不死の力など存在するはずがない。それは分かっていたが・・・条件は人間として当然の睡眠と栄養をきちんととる。それだけだと・・・」
そう言って眼を伏せた角都に同情の色を含んだ眼を向け、ペインは小さく相づちを打った。
「そうか・・・飛段の意識が戻ったら確認せねばならんな。それはお前に任せる。今後の活動に多大な影響を及ぼす事だ。頼んだぞ?」
「分かってる」
そう呟く角都の顔から陰りが消えることはなかった。


飛段の部屋に入り、角都は静かに傍に置いた椅子に腰を下ろした。
普段ならどれだけ身体に風穴を空けられようが、全く何事もなかったように騒ぎ立てているというのに、今は少し青ざめた顔色で静かに眼を閉じて横たわっている。
それは、とても語り尽くせない程の違和感と喪失感を与えるもので、角都はただ、深い溜め息をついた。
そっと布団をめくり、傷を確認してみる。
そもそも、飛段が包帯を巻いているという事自体が角都にとってはあり得ない光景だった。
受けた傷はそのほとんどが致命傷で、普段なら彼の特異な能力のおかげで全く気にならなかったものだったのに、今はただただ不安で胸がいっぱいだった。


本当にいつものように目覚めてくれるのだろうか・・・?


常に傍にあるはずの暖かい存在は・・・失うはずの無いその存在は・・・当たり前の存在では無かった。

異変には気づいていたはずだったのに・・・俺は・・・


角都は頭を抱えるようにうなだれた。
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