短編

□Trick and treat
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水鏡が気を失ってからどれくらい時間がたっただろう。


目が開き、一度瞬きをしたときに急に目に輝きがもどった。
それと同時に目隠しがずれる。

隙間から見えた二人の人影に、水鏡は思わず身の毛がよだった。

一人は手から炎をだして部屋を照らし、もう一人は手にハサミを持って切り絵を作っていた。

ぱさり。

という目隠しが落ちる音で二人が振り向く。

「おやおや悪い子。もうお目覚めですか?」

炎をろうそくに灯してからその男…紅麗が言う。

「目隠しが解けたなら盲目にしようか?」

目にハサミを突き付けながらその女…氷雨が言う。

「ほらほら笑いなさい。綺麗なお顔で。」

ハサミを目から遠ざけ、氷雨が続ける。

「…何故だ。氷雨、紅麗。」

「どうしたの?そんな目で身体を震わせて。温かいミルクで、もてなして欲しいの?」

水鏡の声は氷雨に届かない。

「さぁ中にお入り。ここはとても温かい。見返りはポケットの中身でいい」

ポケット、の所で左の胸ポケットを指す。

紅麗にも水鏡の声は届いていない。

「ちょうだい。早く早く。ねぇほら今すぐに」

氷雨が笑っている。

「二者択一の原則をかなぐり捨てて。」

紅麗も笑う。

水鏡だけが絶望したような顔をし、

「まやかしで、もてなして甘い蜜を吸わせて…何がしたいんだ。」

そう、二人に聞いた。

その言葉がスイッチになったように二人の目がらんらんと輝きだした。

『よこせ。ほら、今すぐに!』

そう叫んで、氷雨が一気にハサミで水鏡の胸を貫いた。

水鏡は仰向けに倒れる。
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