文
□ワスレナグサ
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コンコン、と遠慮がちにドアをノックする音。
「入るよ…?」
それに続いて聞こえたアイツの声。
ドアをノックしたソイツは返事も待たずに静かで真っ白な部屋に──吾郎の病室に──入り、白いカーテンの揺れる窓際のベッドに腰掛けた。
「調子はどう?吾郎君…」
いつもと同じ、でもどこか違う哀しそうな声で寿也は尋ねた。
「ははっ…別にへーきだって…」
どこが?
すっかりベッドの住人になってしまった君は、僕を気遣うように応えた。僅かに聞き取れる位の小さな声で。
「……そう。」
なら何でこんなに僕を不安にさせるような弱くてか細い声で話すの?
普段の性格からは考えられない。まるで君じゃないみたいだよ?
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