story

□アッチの世界
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予鈴とともに消え去ったカレンを見送ったあと、あたしも自分の教室に入る

だいたい中学から一緒だという人達ばかりなのだから何個かグループが出来上がっているのは普通の事で、派手グループ、秀才グループ、オタクっぽいのとかね



他所から来たあたしが気になるのか、チラチラ視線を感じる
とにかく、席につこうとグルリと教室を見渡すと窓際の後ろから二番目の席が空いている
らっきー♪

春の風を感じたくて、すこーしだけ窓を開ける

外の匂いは、アッチの世界でも嗅いだ事ある匂いで、なんだか安心した
例えていうなら、そうだなー 遠足の朝みたいな?
バスの前に集合!っていう時にこんな匂いしてた

くんかくんかしていると

ポンッと肩を叩かれた

「席に着いてないのは、あなただけ」

慌てて振り返ると、さっきまでザワザワしていた人達は、みんな席に着いている。

「名前は?」

あたしの前に座っていたのは、なんと!宇賀神さんだったのだ


「えっと、柚木美斗。あなたは?」

「あたしは、宇賀神みよ」

「ヨロシクね。みよちゃん」

「ちゃん。はやめて」

「え、ごめん。じゃあ、みよ」

「ふふ、またあとでね」

みよちゃん…なんてかわいいんだ
それにその声も…いい!いいよぉ
あたしは、しばらくミヨの背中をみつめていた


ガラガラッ
始業ベルから少し遅れて先生が入ってきた

「オーッス!今日からこのクラスの担任になった…」

カリカリ…カリ…

お決まりの自己紹介が始まった
大迫ちゃんは、まぢ声がデカイ。
ミヨを見ると、ビクビクしていて少し可哀想だった


『大迫力』

と書かれた黒板をクラスのみんなが注目するなか、大迫ちゃんと目が合った

「じゃ、これを読める奴!なんだいないのかー。
じゃあ、そこの後ろから二番目の女子」

いきなり指名されたあたしは、慌てて立ち上がった
お約束でしょ?
そうなんでしょ?

「えーっとダイハクリョクですか?」

そう言うと、大迫ちゃんはニヤリと笑って更にデカイ声で

「おおさこちから と読む」

そのあとは、大迫ちゃんへの質問コーナーになだれ込み好きな女性のタイプやら趣味の話やらで盛り上がっていく
…そんなに騒ぐとホラ、来ますぜ
そうじゃなくても、大迫ちゃん声デカイのに…

「何事ですか!」

ほらみろー アンドロイドの登場だ(笑)
うはー 大迫ちゃんの熱い血がみるみる鎮火していく
生ヒムロッチは、厳しそうだけどカッコイイかも♪
ゲームの中では、初詣にも行ったしドライブにもよく行ったんだよ♪ うふっ

しばらくして、廊下に連行された大迫ちゃんが戻ってきた

ポリポリ頭を掻きながら
「失敗、失敗」
を繰り返す大迫ちゃんにクラスからは笑いが絶えなかった





入学式当日のHRは、簡単な連絡と行事予定表などが配られて、解散となった


今日は、早めに帰って商店街に行ってみようと思ってたあたしは生徒玄関へと急ぐ

「あー!バンビみーっけ!」

あちゃー 捕まったか?
恐る恐る振り返るとカレンが満面の笑みで手を振り、傍らにはミヨもいた

「あ、ミヨはカレンと知り合いだったんだね」

「うん。カレンとは中学からの腐れ縁」

ミヨと言葉を交わすと、カレンが自分も仲間に入れてとばかりに、あたしとミヨの顔を交互にみた

「なになに?二人とも知り合い?」

「うん。バンビは、あたしの後ろの席。こうなる事は、星の導きで分かっていた」

占い当たるらしいよねー
きっとさ、ミヨは星占いとか優しいもんじゃなくて、霊能者に近いというか、透視とかやれそう…

「えー、ミヨとバンビは同じクラスなのー?いいなぁ〜 っていうか…
ねぇ、せっかくだからさ、キューティー3結成のお祝いにケーキ食べに行かない?」

「うん、いいよ」

「やった!」

カレンは嬉しそうに、あたしとミヨの肩を抱いて学校を後にするのだった

「…3?」

「そこ、ひっかからない!」

「3は、よくないという星の囁きが…」

納得いかないミヨを、宥めながら3人は駅前のカフェに足を運ぶのだった
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