story

□アッチの世界
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「ばいばーい」

背中に男の子の声を受けて、軽く手を振ると、あたしは、駅前広場に急ぐ

「うあ、やべぇ〜」

今日は、日曜日。
コウちゃんもルカも珍しくバイトが休みって事で、3人で遊ぼうって事になった。
とりあえず、駅前広場に集合って事になったんだけど、しつこいナンパに引っ掛かかったり、目の前で男の子が転んだりして早めに家を出てきたつもりが既に約束の時間から15分が過ぎている。

日曜ということもあって、駅前は混雑していて、あたしは、ルカの姿を探してキョロキョロする

「ねぇ、待った?」

「ごめん、ル…」

「やった!ビンゴ!ねぇ、1人?俺と遊びに行かない?」

ルカだと思ってニコニコして振り返って見れば、知らない男がニヘラと笑っている
ときめもの男共は、そんなに狩りが好き?って聞きたいほどナンパ野郎が多い。あのカブキ頭君なんて、序の口。
ひどい人になると、普通に肩を抱いたり腕を掴んだりして触れてくる
で、今、あたしの前にいるこの人もキモイくらいに馴れ馴れしい

「あの、ごめんなさい。あたし、今、待ち合わせ中で…」

「えー、なんで?俺と遊ぼうよ。本当はさ、俺も今日、彼女と待ち合わせてたんだよね。でもさ、君を見つけたから、ドタキャンしちゃう!」

は?ドタキャンする必要ない、全然ない

「えっと、他あたってください」

「んー 君がいい」

あーもう、めんどくせぇー

いい加減イライラしてきたぞ!
あたしは、もう一度キョロキョロと辺りを見回す
ルカは、どこぉ?

「ね!いこーよ。」

むんずと手を掴まれた時だった
目の前の男が消えた…
正しくは、横にダイブ…
ビックリして、見上げれば冷たーい目をしたドラゴンがいた

「いってぇな」

蹴飛ばされた男は、眉間に皺を寄せながらルカを睨んだけど…
やっぱりさ、カッコイイんだよね、ルカたん。
男は、無言でルカを見つめたあと勝ち目がないと知ったのか、そそくさと逃げてった

「ヒーロー参上!」

「う、うん。でもさ…もう少し、やんわりと撃退して?ケガさせたら大変だし」

「別にいいよ、あんな奴」

「だめだめ。ルカがお巡りさんに捕まっちゃう。でも、助けてくれてありがと」

「うん。ね?いこ?」

ルカは、あたしの目を覗き混んでニコリと笑った




いやー、いいね。
日曜に、ルカと並んで商店街を歩く。
あたしは、ショーウィンドウに映る自分達をチラ見。うん!恋人同士みたい

ルカの隣を歩きながら、人混みに入っていく。
なんだか、急に混雑してきた
はぐれてしまいそうで、思わずルカの服の袖を掴む

「だめ。これコウの服だから伸びたら怒られる。だから、こっち」

そう言って、ルカは大きな手であたしの手を握った。

「あ、ありがとう」


♪♪〜♪♪♪〜♪♪

「あ、コウちゃんから電話だ」

ピッ

「オゥ、俺だ。どこにいんだ?」

「んーっと、フルーツパーラー長谷川の前」

「分かった…ちょっと待ってろ」

そう言って電話を切って数分後、コウちゃんは人混みをうまく避けながらやってきた

「わりぃ、待たせたな」

「ふふ、コウちゃんって身長おっきいから遠くからでも見つけられるね」

「オマエは、迷子になる達人だろ?ククッ」

「えーそんなことない!特に最近は全くないし…」

あたしは、両手をブンブン振りながら否定するとルカがニッコリ笑ってあたしを真ん中に押しやった

「はぐれないように、オマエは俺らの間ね」

そ、そりゃ嬉しいっす
もうさっきから、街を歩く女の子がチラチラとこっちを見てるのよね
イケメン二人を両手に抱えてズリィっていう羨望の眼差し
ちょっとした優越感を感じる。今まで生きてきて初めて感じた感情。
パネェ美女は、凡人では図りきれない未知なる感情が生まれるのね

「あ、福引きやってる」

ガラカラと回して、ポトンと落ちるアレ
ルカは、モゾモゾとポッケをまさぐるとクシャクシャになった引換券が1枚出てきた

「きのうさ、スーパーで買い物したらもらったんだ。やってきていい?」

「いいよ。1等賞は温泉旅行だって!」

「2等だってスゲェぞ、オイ。洗濯機だぞ」

あたしとコウちゃんは、それぞれ当ててほしい商品を口にしてガラカラ回すルカを見る

ポトッ

「ざんねーん、はいコレ」

温泉旅行も洗濯機も夢に終わったルカは、紙パックのはばたきミックスジュースを手にして戻ってきた

「まぁ、そんなに世の中甘くないってことだよね…」

「あーあー、テレビ欲しかった」

ルカは、ポッケにググッと紙パックを押し込むと、もう一度福引きのテントを見つめた

「日頃の行いがワリィんだろ。ところでよ、どこ行くんだ?」

「ボーリングにでも行く?」

計画もなしに集まった3人だったけど、ルカの提案によりボーリング大会と決め込んだ

……ボーリングって苦手なのよね。
なんかさ、イマイチ楽しくない。
あたしの中で、つまらんスポーツワースト3に入るもん
ちなみに1位は、ゴルフね

「ただやっても、つまんねーだろ?なんか賭けようぜ」

突然、コウちゃんが言い出す

「じゃあさ、ベタだけど勝った人が王様になるってんのはどう?」

ベタよね。却下だよね。
つまんない提案するんじゃなかったとチラリと二人を見る

「オォ、いんじゃねーか」

「いいの?美斗?泣かしちゃうよ?」

なんと可決されました
というわけで、王様を賭けたボーリング大会が始まった
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