story

□アッチの世界
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今日は、5月19日
コウちゃんの誕生日
外は、快晴
こうして、青い空と眩しい太陽を見るとココが二次元だって事を忘れる
最早、自分が本当は24歳である事も忘れてたりする

あたしは、ルカと自分の分の弁当を作る
余所の人の弁当を漁ってるルカを見ていると、野良のワンコを見ているようで

「ホラホラ、こっちおいで。おにぎり食べる?」

って言いたくなるんだよね

もともと、あたしは犬好きだし…アッチの世界でもペットショップで働いてたから、ルカがワンコに見えても不思議じゃないっていう変な言い訳してみたり…
ちなみに、コウちゃんは、やっぱネコ科
闇の中でも、光る瞳…なんちて?


「よしっ できた」

料理?苦手だったはずなんだけどねぇ
ココ来る前に設定装置で、気配りのパラメーターを180にしたからか、料理の腕前はプロだよプロ!
キャベツの千切りなんて見事なもんよ?

でも、ほんと全てが思い通りになってチョッと怖い

容姿も、いくら食っても崩れる事はないし、勉強だって、前は面倒くさいってだけだったのに、今は楽しい

英語や社会は、教科書を読むだけで楽しい
これも設定装置のおかげか?

ちなみに、学力パラは150にしといたんだけどね

「でも、ほんと。上手く行き過ぎてコエー」

あたしは、ルカの弁当を巾着に入れながらポツリと洩らした









2時間目の授業が終わり、あたしは日直のために授業で使った教材を職員室まで運ぶ

体力には自信があった

でも、両手が塞がっててドアが開けられない

「はい、どうぞ」

ドギマギしていると、ガラガラとドアを開けてくれた人がいた

ゲーム通り

「あ、ありがとうございます」

そういって職員室の中に入ると

「柚木、そこにおいといて」

とズズッと茶を啜りながら社会科の菊地先生が言った。
言われた通りに棚に押し込んで、早々に立ち去る

「失礼しました」

なんかねー 職員室の雰囲気って好きじゃない
一通り見渡して、氷室っちがいないと長居する必要もないしね

「あ…先輩」

ちょうど、用を済ませた紺野先輩が職員室から出てきた

「やぁ、君、そういえば、入学式の前に会ったよね?」

「覚えてましたか…」

「ん?覚えられててイヤだったかな?」

「あの時、ヒドイ格好だったし、出来れば忘れて欲しいんですけど…」

そう言うと、紺野先輩はニッコリ笑って、あたしの頭をポンと撫でた

「えっ?」

ビックリして、あたしは紺野先輩を見つめたまま固まった

「ああ、ごめん。馴れ馴れしかったかな?紹介遅れたけど、僕は紺野玉緒」

「いえ、ちょっとビックリしただけで…あたしは柚木美斗です」

「柚木さんだね、うん。
あ、そうだ。なんかあったらいつでもメールして?」

そう言って、胸ポケットから出した手帳に、サラサラと書いてビリッと破いた

「はい、メール待ってるよ」

ちょっと照れたように微笑んで去っていくタマちゃん

身長あるねぇ
それにしても、フレンドリーな人だったねぇ

「あ、これ」

渡された紙をよく見ると、生徒手帳の切れっぱし
走り書きされたメルアドの裏には

「5月から放送委員と図書委員…抜き打ち…ん?」

会議かなんかのメモ書き

ぷっ 紺野先輩らしいや
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