story

□アッチの世界
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腐れ縁のじーさんが作った二次元装置で、ときめもの世界に来てから、5月も半ばになっていた

コウちゃんは、バイクの免許を取るために教習所に通っていて、午後の授業をよくフケるようになった

そういえば、もうすぐ誕生日だ
コウちゃんの16歳の誕生日

16歳には見えねぇー
チラリと横を歩くコウちゃんに視線を向ける

「あん?どうかしたか?」

あたしの視線に気付いて、コウちゃんはあたしを見下ろす

「もうすぐ誕生日でしょ?」

「ああ。ようやくバイクの免許が取れる」


「ルカも免許取るの?」」

コウちゃんから目線をずらしてルカを見上げる

「うん?きのうから通い始めてるよ」

「ふーん。なんかいいね。バイクって男のロマンって感じ」

「はぁ?オメェ、男のロマンなんて分かんのかよ?」

コウちゃんは、ククッと喉を鳴らすように笑って、あたしの頭をポンポン叩く

「分かる!そうだねぇ、男のロマンはねぇ… バイクと冒険と…あと巨乳!」


好きじゃない?だいたい男っておっぱい好きだよ

チラリチラリと目だけで、桜井兄弟の反応を伺う

「ねぇ、お兄ちゃん?美斗はロマンかなぁ?」

「ああ?ククッ ちょっと足んねーじゃねぇかぁ?」

二人の目線を胸に感じて、カーッと頬が熱くなっていく

「もう!二人ともドコ見てんのよー!コウちゃんの変態!ルカのエロガッパ!」

笑い続ける二人を残し、あたしはひとり学校の門をくぐった

「おはよう。柚木さん」

挨拶運動をしている白野くん
同じクラスで、確か彼は図書委員だったはず

「あ、おはよう!白野君。挨拶当番なの?」

「そうなんだ。今週は、図書委員が当番でさ。」

そういうと白野君は、ニカッと白い歯を出して笑った

「それにしても…今日も柚木さんは可愛いね」

「へ?急になに?もう!そんなふうに誉めたって何にも出ないよー?もう!」

気づけば、いつの間にやらあたしの口癖は「もう!」
になっていて、これじゃマジでバンビだって思った

「美斗?どした?」
置き去りにしてきたルカとコウちゃんが、校門付近にいるあたしに追い付いて、怪訝そうに白野君を見ている

「おはようございます!」

コウちゃんの静かな威嚇をものともせず、爽やかに挨拶をする白野君
何気に強者かもしれない





ようやく3時間目が終わって、席から立ち上がる
んー なんか今日は、ねっとりとした視線を感じるんですよね
ふと見ると白野君と目が合った
堪らずに笑って見せると、白野君はこちらにやってきた

「これ見て。新聞部で出してる学校新聞なんだけどさ、ここのランキング見て」

そこには、学校の新聞には全く必要のない記事が書かれている

「彼女にしたい女子」



「彼氏にしたい男子」

ほーほー。
今時の高校は、こういう学校新聞なんだねぇ
フムフムと白野君から新聞を受け取って読む

「あはっ、ルカ人気だ。へぇ、コウちゃんは4位…そんで、1年B組の高杉春人君が3位。おっと!設楽先輩もランクインしてる♪
それにしても、今年の1年はイケメン揃いなんだねぇ
あ、白野君もランクインしてるじゃない」

「別にさ…万人受けする必要ないんだけどね、でも…柚木さんもそう思ってくれてるなら…」

少し眺めの前髪をかきあげて、ねっとりした視線をあたしに投げる

「あ、うん。白野くんはカッコイイと思うよ。なんか足が速いって聞いたよ、そんで雑学王だって、この間、津嶋君から聞いた」

「潤から?そうか。あ、ねぇ、ちなみにそのランキング、女子の見た?」

そう言われて、目線を新聞に戻す

「うっ」


【彼女にしたい女子】
1位 1年A組 柚木美斗
2位 3年C組 松尾・・・
2位 1年B組 花椿カレン
3位 2年E組 豊田・・・





「バンビ、どうしたの?」

ミヨがあたしの挙動不審に気がついて、こちらにやってきた
そして、ヒョコッと新聞を覗き込んだ

「正しい結果。入学式からバンビは注目されてた
分かってないのは本人だけ」


ふーん
なんだか、照れくさい
あれ?そういえば、白野くんは何が目的で、この新聞を見せてきたんだろ

「白野くん!これ、ありがとう。で、あの…?」

「ん?柚木さんも自分のポジション的なものを知っておいた方がいいと思ったんだ」

「ん?なに?」

言ってる意味がわからなくて、少し白野くんに近寄る

「気をつけた方がいいぜ、色々と」

耳元でボソッと言われて、思わず肩が震えた

「ハハッ 柚木さんは耳が弱点か。
じゃ、俺は次、選択の授業だから行くね」


なんか…あの白野直樹くんって曲者者のかほり
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