story

□アッチの世界
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家に着くまで、あんまり会話はなかったけど、心なしか彼はソワソワしているような感じで足取りが楽しそうだ

「…なんか楽しそう」

思わず口にすると、ニンマリした顔でこちらを見た

「ん?いや、自分の行動が可笑しくて。お預け食ってた犬みたいだって思って」


「え?」

「アハハッなんでもない、こっちのこと。着いたよ」

彼は一軒家の前で立ち止まる。
玄関のプレートには、きちんと「柚木」の文字

「じゃね、バイバイ」

「あ、送ってくれてありがとう」

慌てて彼の背中に声をかけると一瞬振り返って笑った

あたしは、熱くなる頬っぺたを両手で抑えたまま小さくなっていく彼を呆然と見つめる



いやー すげぇよ。じーさん

あたしは、まだ家の中に入れず外観を眺めている
表札が柚木になってんだもんなー。本気でバンビ?
でも、嘘ついてるみたいでなんかイヤよね

彼らと小さい頃遊んだことないもん。だって、あたしはアッチの世界から飛んできた人間だもの

でもさー、どうなの?
この家には、誰が住んでるわけ?
もしや、あたしの両親?


恐る恐る玄関のドアに手を掛けると鍵が掛かっている

え?どゆこと?

とりあえず郵便受けを確認してみるとありました。封筒イン

ガサゴソ破ると鍵と共に手紙も出てきた

『戸締まりとガスは、しっかり確認すること。独り暮らしだからといってもアナタは高校生です。高校生らしい生活してください』

詳しい話は置いておいて早い話が

独り暮らし
しかも、ときめもの世界で夢の独り暮らし

そうとわかれば宴会だなコリャ
見た目はキャピキャピの15だけど中身は成人、お酒大好き

そそくさと家に入ると、冷蔵庫を漁る
冷え冷えのビールにニヤリ


「カーンパーイ」


プシュッとブルタブを開け喉を鳴らして飲む

「んめー!」

そういえば、あたしは設定通りなのか?
アタリメを葉巻のように唇に挟めたまま、そーっと鏡の前に立つ


「せーっの」

頭の中で オーケストラが演奏を始める
桜満開 春うらら〜

「ホンモノ?コレあたしっ?」

鏡の中のあたしは、すっごく可愛かった
色々してみる。変顔とかボディービルみたいなポーズ
ラストはこれ
「コマネチっ!」

…可愛い。
自分で自分が可愛い
スタイルなんかもちっちゃくて細くて白くて何をやっても可愛い
誉めすぎ?だってさ仕方ないよ。アッチのあたしには味わえない感動なんだもの

さわり心地のよい髪を撫でる
色素の薄い茶色のロングヘアー
これ憧れてたの
天パに加え量もパネェあたしは ここにはいない

軽い 白い 可愛い
楽しい
可愛い子って、こんなに毎日楽しいんだね〜 ズリィ


「では、美斗の可愛さにもう1本呑もう!そうしよう」

リビングに戻って2本目に手をかけた時、携帯がなった

「無事にデータの世界に行けてるのかの?ワシは少し寝るでな」

なんということでしょう。向こうの世界のじーさんからメールです

「じーさん、天才」

っと。
だけど、どうやら繋がるのはじーさんのアトリエの装置だけで通話はできないらしかった
携帯の電話帳が全て消えている

「テレビ見てみるべ」

ピッ


ランキングチャートには、分からない人達だらけ…
マズイこれじゃ、流行パラがヤバイ
もともと流行りもんに疎いあたし
明日、雑誌買ってくるべ

しばらくして、独り宴会を閉めたあたしは、恐らくあたしの部屋であろう二階へと足を運ぶ



ガチャ


スタンダードな部屋。
シンプルであたしは一番好きだった

ぐるりと見渡す

あったーー

はばたき学園の制服 ンフそして机の上のプリントには入学式の日程が書かれていた
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