小十郎短編

□月光
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天河の国が信長の手によって滅ぼされ、かの国のひとり娘である洸姫と護衛である忍の五右衛門が、利休先生や前田慶次らの手引きによって、姫の祖国より遥か遠いここ奥州の地にやって来た。


忌まわしい存在かと思っていたはずなのに━━━。


━━━そして。


出逢ってしまった美しい月夜の晩に……。

「そこにいるのは誰だ!名を名乗れ!」


影から出てきたのは天河国の洸姫とその従者である忍だった。


小十郎は初めてその人を見た時、月明かりのなかに佇む天女かと思うぐらい美しいと思った。


一方、洸姫も月明かりに照らされた小十郎を見て、とても美しい男性だと思った。


お互い一瞬、時の流れが止まったように感じた。


その出逢いがお互いを惹き付けたのか惹かれたのか、わからないが、この瞬間がお互いを意識するきっかけとなった。




 秋風に

 たなびく雲の

 絶間より

 もれいづる月の

 影のさやけさ


   〈左京大夫顕輔〉


【訳】
秋風に吹かれてたなびいている夜空の雲の絶え間から月の光がこぼれ出ております。
なんという清らかな美しさでありましょう。




【終幕】



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