犬僕
□作戦
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いつも残夏ばかり俺をからかってきて悔しい。
てことで。
それは数日前のこと。
「渡狸…」
「ん?あぁカルタか。なんだ?」
「これ…蜻さまから…。渡してって言われたの…」
「…え″っ…」
蜻蛉と言うと、思い出したくもない嫌な思い出が蘇る。
その諸悪の根元ともいえる蜻蛉からの贈り物なんて、信用できるわけがない。
だが、カルタが取り出してきたものは立体的なものでは無く、本のような形をしていた。
いかがわしい本でも入ってるんじゃないか、と思ったが、カルタをいつまでも待たせるわけにもいかなかったので。
「あ、あぁ、ありがとな、カルタ。」
「うん…じゃあね、渡狸…」
そして、自室にもどると、近くのソファに腰掛けて、先ほどカルタから受け取った紙袋を見た。
(改めてみてみると…やっぱり本…みたいだよな。でもなんの…?)
悩んでいても仕方ないので、意を決して中身を取り出すことにした。
「…は?なんだこれ?」
中に入っていたものは、でかでかと“彼氏が彼女にしてほしいことベスト10特集!”と書いてある…いわゆるティーンズ向け雑誌だった。
「…なんでこんなもんが…っと?」
袋を置き、雑誌をパラパラ捲っていると、ひらりとなにやら紙切れのようなものが落ちてきた。
そこには、
“ドMな卍里へ
お前には試練を与える。この本に書いてある方法を使って残夏のあのおちゃらけた表情を崩すのだ!いい報告を待っているぞ、性奴隷よ!
真面目なドS、蜻蛉。”
読み終わって最初に思ったこと。
それは、
「俺はドMじゃねぇっ!!不良だ!!」
本文はほぼ渡狸の頭に入っていなかった。
もう一度読み返す、と、それなりに蜻蛉の言いたいことが伝わった。
「要するに、“この雑誌に書いてある方法で残夏を動揺させてみろ”、と…?」
面白そうだ。
残夏の表情が崩れるとこなんて、全くと言っていいほど見たことがない。
そして冒頭に至る。
そして早速実行に移そうと、雑誌を読み始めた。
その夜。
早速実行しようと、本人には内緒で残夏の部屋に向かった。
あの本をもらってから、残夏に会うことはなかったので、バレてはいない。…多分。
いざ残夏の部屋の前にくると、覚悟はしていたものの、やはり恥ずかしくなってくる。
(や、やっぱやめよう、明日にしよう…)
と思い、踵を返すと
「あれ〜、渡狸?」
もとは会いにきたけど今一番あいたくない人がそこにいた。
髪が濡れている上普段着なので、風呂からあがってきたのだとすぐわかった。
(しっ…仕方ない、か。このまま何も言わずに帰るのもアレだし、実行、しちゃうか…)
「渡狸?」
「うえっ、あ、あの…っ!!…ざ、残夏に、会いに、来たんだ」
「…ふーん?渡狸にしては大胆だねぇ?まぁ、入りな、ここじゃ寒いでしょ?」
視えたかな、と思ったけどそうではないようで、渡狸は胸を撫で下ろした。
「そこらへんに座っててー。飲み物何がいい?」
と言われたので、そばにあった黒布の二人掛けソファに腰掛ける。
「え、えっと…、こ、ココアで!」
「はいはーい♪」
「はい、渡狸。」
といってココアを手渡してくれる残夏。
一口飲むと、ココアの暖かさが体に染みた。
「…で、急にどうしたの渡狸?」
と言って俺の隣に座る残夏。
「え、えっと…」
今しかチャンスは無い。
「わたぬ…」
残夏が全てを言い終わる前に、
俺は残夏にキスをした。
たまにされる、深いキスを思い出しながら見よう見まねで真似をする。
「ん…、ふ、ぁ…」
誘われてると感じとったのか、口の端から垂れてきていた唾液を舐めとり、残夏の方から舌を絡ませてきた。
「…!?…ん、むっ…」
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