□白澤の声が出なくなる話。
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粗雑。
雑。
会話文ばっか。
リハビリなので本当雑いです。お気をつけて!!












「………っぅぇ、」

朝起きると、喉が焼けるように痛かった。声を出そうとしても、喉を痛めるばかりで出ない。このまま無理をしても無駄と考え、起き上がった。


「…そういうことでしたか」

既に起きていた桃タロー君に事情を筆談で説明すると、なんとか納得してくれて。

「今日は俺が店番をしますんで、白澤様はおとなしく寝ててください」
『うん、ありがとう。ごめんね』
「いえ、いいですよ。具合悪いときは無理しないのが一番ですから」

やっぱり桃タロー君はお母さんっぽい(僕には『母親』ってものがないから、想像だけど)なーと思いつつ、奥に引っ込もうと思っていたら、

「こんにちは」

よりにもよって一番聴きたくない声が聴こえた。

「………ぅげ」
「げ、とはなんですか。私は客ですよ」

しょっちゅう僕を殴ってきたり扉壊す野郎を、客だからといって丁寧に扱えるほど僕は寛容じゃないんで。と言い返したかったのに、やっぱり声は出なくて。僕の異変に気づいたようで、鬼灯は不思議そうに眉を潜めた。

「どうしたんですか、白澤さん。今日は随分大人しいですが、悪いものでも食べましたか?これは明日槍が降りますね」

ボロクソに言われても、声が出ないせいで言い返せないのが悔しくて、鬼灯を睨みつける。
すると、本当に何も言い返してこない僕を不審に思ったのか、鬼灯は僕をじろじろ見ながら近寄ってくる。

「あぁっ…ほ、鬼灯さん。あのですね、白澤様は今ちょっと体調不良らしくて…」

桃タロー君が助け船を出してくれて、鬼灯は立ち止まった。

「体調不良?………これがですか?」

「これ」って。お前な……

『これって言うな!』とメモに書いて鬼灯に見せつける。と、鬼灯はそれを一瞥しただけでほとんど気にかけてもいないようだった。

「………ふむ。では私が看病してさしあげましょう」
「え?鬼灯さんが?」
『はぁ!?な、何言ってんだお前!?お前こそおかしくなったんじゃないの!ていうか仕事しろ!!』
「煩い豚ですね…今日は休みを貰えたんです。だから貴方に嫌がらせをしに来たのですがね」
『全然嬉しくない情報ありがとう……』
「いいえ、貴方の嫌がる顔が見れたので満足ですよ」
『ドS!!!』
「いいですから貴方の部屋にいきますよ」
『うあああ桃タロー君たすk』

メモを書いているときに鬼灯に担がれて肩に乗っけられる。担がれるときに「暴れたらぶっ飛ばしますよ」と釘を刺されたため、僕は大人しく担がれるしかなかった。




場所は変わって、僕の部屋。
「全く……毎日遊び歩いてるから天罰が下ったんでしょう。熱はあるんですか?食欲は?」
『う…えと、熱は多分…ない、食欲はあるけど、今食べたら吐くと思う』

そもそも、万物を知る神獣である僕が原因不明の病とか…考えただけで憂鬱になった。
それにしても、普段出会い頭に殴ってくる鬼灯が優しいと、調子が狂う。
確認のため、僕のおでこに手をあてて熱を測った鬼灯の手にドキッとなんてしてないから。全然。

「熱はなさそうですね。では…本当に喉だけですか。ここに加湿器はあるんですか」
『一応ある。多分奥の倉庫のどっかにあるんじゃないかな』
「わかりました。少し待っていてください」

前に乾燥を気にする女の子のために、と思って買っておいたものが、自分で使うはめになるなんて…と一人苦笑した。





◇◆◇◆


加湿器をつけてもらって、少しは喉も楽になってきてはいたものの、まだ喋れそうになかった。
鬼灯は椅子に座って僕を監視(では無いと思いたいんだけど、そうとしか思えなかった)していたから、僕は布団を被って鬼灯の目線から逃れた。
そのうち暖かくなっていって、僕はそのまま意識を手放した。







「…さん、く澤さん。…全く…寝起きの悪いジジイですね」
「………ぅ……?」

寝惚けていてほとんど何を言っているのかがわからなかったけど、バカにされていることだけはわかった。でもまぁどうやら流石の鬼灯も今日は何も手を出して来ないようなので、もう一度眠りにつこうと思っていたら、そっと布団をはがされて、顔だけ見えるくらいにされた。

(…まさか落書きとかする気じゃないだろうな)

ペンをノックする音かキャップを外す音が聞こえたら全力で逃げてやろうと思って耳をそばだてていたけれど、いつまで経ってもそんな音はせず、聞こえたのは衣擦れの音だけだった。そして、


そっと、触れるだけのキスをされた。


「………って、えええええええ!!??」

勢いよく起き上がると、鬼灯はさして驚きもせずに言う。

「おや、喋れるようになったんですか。おはようございます」
「おはようじゃねえ!!なっ、何してっ……!!」
「キスですけど」
「う、うぅぅそうだけど!!なんでしたんだよ!」
「何故でしょうね」

人の寝込み襲ってきた鬼灯も鬼灯なんだけど、何よりキスされて心臓がばくばくいってる僕もおかしい。絶対おかしいって、絶対。

「顔真っ赤ですよ、白澤さん」
「う、ううううるさいっ!!」

「そんな顔をされると、自惚れてしまいそうですよ」

「………へっ?自惚れ…って?何が?」
「…つくづく物分かりの悪い駄獣ですね。私は貴方のことが好きなんですよ、白澤さん」
「……へ?え?鬼灯、が?僕を…?」

鬼灯が、僕のことを、好き。

そう心の中で反芻すると、どくん、どくん、と脈がはやくなっていくのがわかった。

「……ぁ、う…」
「…白澤さん?」

【それ】は、認めてしまえばえらくすとんと腑に落ちてしまって、でも言葉にするのは恥ずかしくて。僕はメモ帳を取り出して、手が震えるのを抑えて『僕も、すき』と書いて突っ立った鬼灯につきつけた、けど。

「貴方はもう喋れるでしょう。言ってください、貴方の口から」
「はっ……!?……う、う…


…………好き、だよ………馬鹿鬼…」
「…ふむ、まぁいいでしょう」
鬼灯は何となく気に入らないみたいだったけど、何も言わずに立ったまま僕を抱き寄せた。
またどくん、と心臓が大きく跳ねる。

そのまま何秒過ぎたのか、はたまた数分過ぎたのかは定かじゃないけど、鬼灯が先に口を開いた。



「もっと素直になれないんですか、貴方は」
「はぁ?うるさいなっ、僕はいつでも素直!」
「おや、そうでしたか。全くそうは見えませんがね」
「……ねぇ、鬼灯…僕達付き合うの?」
「ノーと言う権利は貴方にありませんよ。女遊びもやめなさい」
「嫌だ!女の子とお前は別!」
「………つまり、貴方は私を怒らせたいんですね?いいですよ、お望み通りお仕置きしてあげます」
「すんな!そんなことされても嬉しくないし!僕は女の子を抱きたいもん」
「…はい、白澤さんの負けです」
「だーーー!くっそぉ!!!」





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