□裏と表
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どうしてこうなったんだろうか?

薄暗く人通りのない裏路地にぐちゅぐちゅと卑猥な水音が響いた。

「ひぃ、あぁ…っ!も、やめろ…!!!っんぁあっ!!」

「うるせえな、しっかり感じてるくせに」

頭がぼーっとしてなにも考えられない。考えるのを拒否しているのかもしれない。どんなに抵抗しようと力が入らず、寧ろこいつを悦ばせる要因にしかなり得なくなってしまった。

考えるのを拒否した脳にチラッと映った自分の恋人は、今何をしているのだろう。まさか、自分が強姦されているなんて思いもしないであろう。



***



町を巡回している時に出会った優男の風貌をした奴は、目を見てすぐに昔会った奴だと気づいた。

ーー俺がゴロツキだった時に潰した奴だ。

もちろん一々潰した奴の顔なんぞ覚えていなかったが、雰囲気が無言で語っていた。


「よォ、リヴァイ、だっけ?久しぶりだなァ」

癪にさわるようなわざとらしい間延び方をした口調で奴は話しかけてきた。

「…あぁ?誰だ、テメェは」

「オイオイ、わかってんだろ?俺がどんな奴なのかはよォ」

「名くらい…ーーッ!?」

名乗れ、と言い終わる前に後頭部を後ろから鈍器のようなもので殴られ、俺はその場に倒れ込んだ。

しまった、と思った時には既に遅く、目の前ばかりに気を取られて、背後に仲間がいたのに気がつかなかったのだ。
起き上がれ、と脳に命令をするが靄がかかったように視界が霞み、腕を動かそうとしたり無駄な抵抗をしながら意識を手放していった。



次に目が覚めると薄汚い裏路地だった。
手は後ろ手に拘束され、足も開脚するような形で拘束されていた。

「やァっとお目覚めかよ?」

下卑びた笑顔をこちらに向ける。あぁ、汚い、気持ち悪い…

「とっととこれを外せ、クズ共」

「嫌に決まってんだろォ?」

男がやれ、と合図をすると数人の別の男共が俺の服を脱がしていく。気持ち悪くて吐きそうになる。

わざとらしく俺の服を丁寧にはだけさせ、上半身が露にされ、羞恥で死にたくなった。

「男にしては肌綺麗すぎじゃねえ?」

一人の男がそう言うと回りの奴らが笑った。

「じゃあ、俺が最初に戴くぜ」

そう言って口周りに髭を生やした男が俺に近寄った。これから得る快感を期待した顔をしながら。




一度足の拘束を外されズボンと下着を一気に降ろされる。暴れようとするも相当きつく拘束されていたようで足が痺れ、言うことを聞かなかった。

あまりの気持ち悪さに吐きそうになる。

男はローションを手に垂らし、それを指に塗りたくった。そして、俺の後孔へとそのまま突っ込んだ。

「――――ッ!!ひっ、ぐ」

いつもエレンとするときはエレンが俺を一片も傷つけまいと優しく愛撫してから交わるのだが、この男は前戯も無いままに指を挿れられたため、快感なんて欠片も無かった。

「、っあぁ、ひぐ…っ」

生理的な涙が零れる。男達はそれを見て更に嘲笑った。

「無様だなァ、オイ」

ぎゃはは、と癪に障る声が裏路地に響く。




「んじゃ、そろそろいいだろ」

散々俺のナカを弄り回したあと、男は指を引き抜いてズボンと下着を一気に脱いだ。
ソレは既に勃起していて、気色悪さに涙がまた一筋流れた。
男は俺の後孔にソレをあてがうと、一気に最奥まで突いた。


「―――ッ!!!」


先程散々解されたそこは男のモノを簡単に受け入れた。屈辱で、嫌悪で、いっぱいな筈なのに、俺は…


「っは、スッゲェ、こいつ…きゅうきゅう締め付けてやんの!男に掘られて感じるとかただの淫乱じゃねえか」
「っは、ぃあぁ…っ、やめ、っ」


嫌でも反応してしまう自分が憎かった。
慣れてくると、いつもエレンとしているときを思い出してしまうのだ。

挿入されてから数分後に男は果てたが、それで終わるわけもなく二人目の男がいきり立ったそれを一気に最奥まで突いた。

「ーーっ、…ぁ、あぁあっ!!」

挿入の快感に耐えきれず、せめて果てないようにしようという俺の決意は儚く消え去った。
白濁を吐き出して尚また立ち上がっている自身を男が扱く。
無意識に嫌だ嫌だと首を振るが男は嘲笑うだけで、突くことを止めず、そのまま俺は二度目の絶頂を迎えた。









それから、何度果てたか、何度犯されたかわからない。
ただ覚えているのは男の精液が俺の中に放たれる不快感ばかりだった。
いつになったら終わるのか。果てすぎてぼやけた思考を働かせようとした、その時。



「…なに、やってんだテメェら…っ!!」



誰かの怒りを押し殺したような声が聞こえた。

あぁ、この声は確かーー


「兵長からっ…俺の恋人から離れろ!!」

エレンだ。俺の帰りが遅いのに気付いて探したのだろうか。

「え、れ…」

さんざん喘がされたせいで声が枯れ、ろくに発音することすら出来なかった。

それでもエレンは気付いたのか、こっちを見て微笑んだ。『今助けます』そう言っているように思えた。



エレンはー火事場の馬鹿力と言うんだろうかー五人程を殴り倒したあと残った数人を睨み付けた。するとそいつらは散り散りに逃げ去っていった。

「兵長!!大丈夫ですか!?」

睨み付けたときの顔とは一変、いつもの犬のような心配そうな顔で俺に駆け寄りった。

「兵長っ…すいません、俺がついていっていればっ…」
「…別に…」

お前のせいじゃない、と言う前に抱き締められた。

「…ごめんなさい…」

まるで自分が怒られたかのようにしょげるんだな、お前は。

「とりあえず、帰りましょう?お風呂入りたいでしょうから…今は気持ち悪いと思いますけど…それとも、今掻き出しますか?」

そこで、エレンの目に欲が浮かんでいるのに気づいた。
これは嫌だなんて言えそうにないな、と諦め、小さく首肯した。

「んじゃ、兵長…足、広げてくださいよ」

「…ん…」

掻き出すだけ、なにもやましいことはないと自分に言い聞かせるが、やはり少し羞恥心があった。

くちゅ、とエレンの指が入る感覚。ついさっきまで行為をしていたそこは、指を入れられただけでぴくりと反応した。

「兵長、待っててくださいね。すぐ終わらせますから…」

俺の中で指をバラバラに動かされ、掻き出される。


「…っふ、んぅ…っ」

唇を噛んで声を出さないようにしていてもふっと息をした時に嫌が応でも声が漏れてしまう。

「兵長、感じてるんですか…?」

わざとらしく大きな音をたてながら掻き出すエレンを睨み付けるものの全く効果は無いようだった。

そして、エレンの指が最奥を掠める。すると、今まで入口周辺ばかりを弄られ散々焦らされていたために、俺はそれだけで果てた。

「はっ…ーーっ、ふ、ぅ」
「…っ、へい、ちょ…」

いれたい、です。興奮したようにエレンがそう言うのをぼやけた頭で聞いた。
もういちいち意地をはるのもめんどくさくなったため、俺は何も言わずエレンに抱き着いた。





「あっ、や、ぁあ…っえ、れんっ…!!」

内壁を抉る感覚に目の前がちかちかする。もはやされるがままで情けないがエレンにしがみついているので精一杯だった。

「っは、兵長っ、可愛い…」
「うる、さい…っ黙れぇ…っひ、ぁぅ…!!ぁ、また、イっ…」

びゅる、と随分薄く少量の精液を出し、荒くなった息を整えようとする、が。

「ダメですよ、兵長…、まだ、俺イってないです…っ」

そう言い、エレンは俺をエレンの上に座らせるようにして思いきり突き上げた。


「…ーーーっ!!ぁ、あああっ!!」

背中がのけ反り、頭が真っ白になる。

「っく、へいちょ、締めすぎっ…!」

そう言ってエレンはそのまま俺の中に射精した。







「…ほんっ………とうにすいませんでした!!!!!」
俺の前に床に頭を擦り付けて土下座するエレン。


「…うる、さい…くそ、やろ…」

あの後、すぐさま正気に戻ったエレンはまた掻き出し作業に戻ったらしい。
らしい、と言うのは俺が少しの間気を失っていたからで、俺が目を覚ましたときには全てを終えたエレンが土下座していた。
ちなみに服も着せられていた。


「兵長…怒ってますか…?」

土下座した状態で顔だけあげてじいっと見つめられる。涙目になっているのが少し面白かった。

「……あぁ」

あえて怒ったような声音で言うと、エレンがびくっと体を強張らせた。

「…ただし」
「?」


「お前が、馬の代わりに俺を連れ帰るなら、話は別だがな」

「………!!!」

ぱぁぁぁと擬音が付きそうなほどエレンの表情が明るくなる。

「了解ですっ、兵長!!」

エレンは勢いよく俺に近寄ると、目を見張る早さで俺を横抱きー俗に言うお姫様抱っことやらだーをされた。

「…オイ、馬はこんなことしねぇよ」
「俺、兵長の馬じゃなくて恋人ですからっ」

そう言うエレンの笑顔は年相応に見えた。

ふと、自分のジャケットを見るとエレンが土下座をしていた時についた泥が自分のジャケットにもついていた、が。



「……悪くない」


指摘するのは、帰ってからにしようと思う。

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