他
□それはまるで、キャンディのような
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「あ、フリッピー」
名前を呼ばずともわかるくらい派手な迷彩柄の服で身を包んだ男…フリッピーは、僕の声に気づくと、すぐ振り向いた。
「ナッティくんじゃないですか。こんにちは。」
「相変わらずかたくるしー挨拶だなあ。ね、ね、ところで、あれ、ある?」
「はい、ありますよ。」
そういうとフリッピーは、ポケットからチョコクッキーの入ったプラスチックの透明な袋を取り出した。
「今日もあいつの手作りなの?」
「はいっ、ディドくんが作ってくれたんですよ。」
「そっかあ。じゃ、いっただっきまぁーすっ」
このリア充が。とは毎回思うけど、実際あいつの作るお菓子はおいしい。だからこうしてフリッピーから毎日少しおすそ分けしてもらっている。
「今日は何枚くらいいい?」
早く食べたい衝動を抑えつつ、何枚食べていいかを聞く。その日によって作る枚数もまちまちだから、加減が微妙なんだとか。
「今日から、袋ごといいですよ。」
「へ?」
まじで?いいの?え、でもフリッピーの分は?
心の中で思っていたつもりが、全て声に出ていたらしく、
「はい、いいですよ。ディドくんにナッティくんがいつも貴方のクッキーを楽しみにしてくれているんですよって話したら、快くナッティくんの分も作ってくれたんです」
「へぇー。…じゃあ、ありがたくいただきまっす!」
「喜んでもらえてよかったです。…ところで、こんなところで立ち話もなんですから、あの木の影のところに行きませんか?最近暑いですし。」
「そーだね。」
いつもこうして、2人で話しながらクッキーを食べる。
いつもは数枚だからすぐ食べおわっちゃうけど、今日は一袋まるまるだから、結構長い間フリッピーといっしょ。
ぼくは、二人で話してるこの時間が結構好きだったりする。
アメちゃんのような、あまーい時間。
このきもちがなんて名前かなんて知らないけど、
フリッピーがあいつのことを話してると、胸がちくちくさされるような痛みがするのも、
このフクザツなきもちの名前がわかるまで、とりあえずはこのままでいいかな、と思った。
end
フリッピーは如何にも同居してるように言ってますが、実は家がお隣さんってだけだったり。
だから実はフリッピーもナッティちゃんが好きなわけです。要するに両片思い。