毛探偵
□かみさまは、時に僕を甘やかす。
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いつの間にか眠っていたようだ。
目を開け、窓を見ると夕暮れ時だったはずがすっかり夜になっていた。
ふと目に手をやると、また泣いていたようで頬が濡れていた。
「…もう、」
待つのは、やめた方がいいんじゃないか。
そう考えると、また心が痛んだ。
「…ん?」
ふと耳を澄ますと、隣…つまり俺が寝転がっているベッドから寝息が聞こえた。
庵さんではないだろう…じゃあ誰だよ!?
今は雲に月が覆われていて、外が明るくないため、起き上がり目を凝らして息が聞こえた方を見た。
すると、なんとそこには、
「…え、遥…?」
愛しい、彼の姿があった。
本当に遥なのかを確かめるように、俺は遥の髪に軽く触れた。
「…ん…?…圭、くん…、起きたの…?」
もぞ、と遥のアホ毛が動いたかと思うと、数ヶ月ぶりの懐かしい声がした。
反射的に手を離すけど、貧弱もやし(失礼)のはずの遥に捕まれた。
そのまま遥も起き上がり、捕まれていた右手はそのまま、ついでと言わんばかりに左手も捕まれた。そのまま両手ともゆっくり指を絡められる。
「…ただいま、圭くん」
にこ、と優しく微笑み、そう言う遥。
どこから入ってきたんだよ、とか、どこに行ってたんだよ、とか、聞きたいことはいっぱいあったはずなのに、言葉が出ず、代わりにもうとっくに枯れたはずの涙が溢れでた。
「…は、るか、遥…なのか…?」
「そうだよ。…寂しい思い、させてごめんね」
優しくそう言い、とめどなく涙が溢れている俺を抱きしめた。
「…はるか、遥…っ、会いたかった…!!」
「うん、僕も。好きだよ、圭くん…」
ちゅ、と軽くキスをされ、顔に熱が急に集まったのがわかった。
真っ赤になった俺の顔を見て、また優しく笑った遥は、雲から出てきた月に照らされ、いつもより綺麗に見えた。
end