毛探偵
□嘘
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あの日見た空、
茜色の空を
ねえ、君はおぼえていますか。
テーブルの上の鳴らなくなった携帯を見つめる。
…前はうるさいほど鳴っていたのに、今では不気味なほどに静かだった。
「…は、るか」
誰もいない自室で、ベッドに仰向けになったまま愛しい彼の名を呼ぶ。
当たり前だけどかえってくる声はない。
俺は、自然と涙が溢れた。
いたときは、うざったらしいと思っていたのに、いなくなると急に寂しく感じてしまう俺は、馬鹿なんだろうか?
『またね、圭くん』
嘘が嫌いだと言った彼は、俺に嘘をついて去っていった。
男同士なんだから、いつかは別れがくることは、わかっていたはずなのに。
「…あいたいよ、遥…」
かすれた声でそう呟き、俺は思考を遮断するように、泣きすぎて少しはれぼったくなった目を閉じた。
snog:シ/ド『嘘』