陽炎
□夜にお散歩
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マリーを寝かしつけて、そのまま寝ていたようで。
マリーのベッドに突っ伏すように寝ていた俺は、深夜になり体が冷えて目覚めた。
「んっ…ま、りー?」
目を開けると、ベッドは既に温もりを失っていた。
一応トイレや台所など、行きそうなところは一通り確認したけど、どこにもいなかった。
(まさか…)
玄関へ行くと、案の定あるはずの場所にマリーの靴だけがなかった。
「…マリー!」
アジトからそう離れていない、子供たちに忘れさられたように遊具も何もない(辛うじてあるのは砂浜とベンチぐらいだ)公園にマリーはいた。
ブランケットを羽織り、ベンチに座って空を見上げていた。
「マリー、危ないじゃないすか、深夜にアジト出たら。何があるかわかんないんすよ?」
「う…でも、そのときは固めるもん」
「能力出す前に捕まったら元も子もないんすよ?まあ、今回はなんもなかったみたいだからよかったっすけど…」
マリーの座っているベンチへと俺も座り、軽くお説教する。
俺が怒った素振りを見せると、しゅんとして「…ごめんなさい」とマリーがうつむいて言ってきた。
「ん、許すっすよ。ところでマリー、何見てたんすか?」
「ん…星、見てたの、アジトの窓からじゃよく見えないから…」
「だからって…だったら、俺を起こしてよかったのに」
「で、でも、セト気持ちよさそうに寝てたし、反対されるかな…って思って…」
「んー、まあ反対したかもしんないっすね、やっぱ」
「ほら…だから言わなかったんだもん…」
ははは、と軽く俺が笑うと、マリーは笑い事じゃないもん、と頬を膨らませた。
「ごめんごめん、馬鹿にしてるわけじゃないんすよ?」
「…嘘」
「ホントっす。ふ、…っくしゅ!…寒っ!予想以上に冷えるっすねぇ、上着てくればよかったかな…」
そう言って体をさすると、マリーがくいくいと服を引っ張ってきた。
「ん?どうしたんすかマリー」
「このブランケット、結構大きいよ…?」
「………はははっ、ありがとっす、マリー。お言葉に甘えて入らせてもらうっすね」
そういって差し出されたブランケットの半分を羽織った。
「…星、綺麗っすね。ここらへん街頭少ないから普通より見やすいんだろうな」
「ん、そうだね…」
無意識に二人体を寄せ合い、空を見上げた。
寒いからなのか、それとも他に理由があるのか、わからないけれど、いつもより星は輝いてみえた。