黒バス

□あの人のきれいなところ
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「赤ちん赤ちん、これ懐かしくね?」

そう言って俺は、手のひらに乗っけた赤いビー玉を赤ちんに見せた。

「ああ、ビー玉か。そういえば、確かに最近は見なくなったな」

何かを懐かしむようにビー玉を眺める赤ちんの真っ赤な目は、この赤くて綺麗なビー玉みたいだと思った。

「じゃあ、これも買ってくる」
「そうか?でも敦、新しいまいう棒を買うんじゃなかったのか」
「箱買いしても間に合うから大丈夫ー」

そう言って、俺はすっかり顔なじみになったおばあちゃんのいるレジへまいう棒の箱とビー玉を持って行った。









***






新作のまいう棒が出るから、いつもの駄菓子屋に行きたいと俺が部活帰りに行ったのが始まりだった。

まぁいいよと承諾してくれた赤ちんと共に店へ行き、まいう棒を探している途中にこのビー玉を見つけた。
店の照明が反射してきらきら光っていて綺麗だったからと、懐かしさから手に取った。そして、冒頭に至る。

この赤いビー玉だけぽつんと売れ残っているのを見て、無意識に赤ちんと重ねてしまったというのもあるかもしれない。

このビー玉を見せた時の赤ちんの目を見て、ああ、やっぱり似てるなって思ったのも確かだ。今度はあまり確証は無かったけれど。





学校を出るときには明るかった空は、すっかり夕暮れ時になっていた。
箱買いしたまいう棒を食べながら、俺より少し先を歩く赤ちんの後ろ姿とビー玉を見つめる。

(やっぱり似てる)

どこが、と言われると困るが、「なにか」が似ていると思った。

「敦」

いつの間にか立ち止まっていた俺の前に、赤ちんが立って俺を見上げていた。
ふと赤ちんの目を見つめると、夕焼けの光が反射してきらきら光っているように見えた。

…あ、

「どうした?」
「…赤ちん、わかったよ」
「は?」

意味がわからないという顔でこちらをみてくる赤ちん。俺はビー玉を人差し指と親指でつまむように持ち、沈みかけている太陽の光を当てた。
すると、先ほどの赤ちんの目のようにきらきらと光を反射した。

「きれい、なんだよ」
「…敦、主語から喋れ」
「えーと、つまりこのビー玉って赤ちんみたいだなーって。ちっちゃいけどきらきら光ってて、きれーだなって思ったの。しかもこの赤色って赤ちんの目みたいな色してるじゃん」

だから、赤ちんみたい

そう言うと、赤ちんは一瞬驚いたように目を大きくすると、すぐ微笑んだ。そして、

「敦は変なところでロマンチストだな」

と言われた。

今度は、赤ちんの目だけじゃなく赤ちん自身がきらきらと光っているように見えた。


「じゃあ、帰ろうか。早く帰らないと日が暮れる」
「そーだね」

また少し俺の先を歩きだした赤ちんの背中を追いつつ、ビー玉越しに赤ちんを見たらもっときれいかな、とビー玉を覗いてみたけれど。


見えたのは、ビー玉の無機質な赤だけだった。



(不器用な獣達)様に提出

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