□SS/過去拍手
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(蝙翔鬼)



――年齢は結構離れているし、人当たりもいい方じゃない。顔立ちはわりと整っているくせに滲み出る性格の悪さで台無しだし、もちろん私を好いているなんてことも有り得ない。
いつもつまらなさそうに眉間を寄せて、冷ややかな目をして、気だるげに頬杖をついている。彼はそんな人。

私になんかこれっぽっちも興味を持っていない、蝙蝠と暗夜と孤独を何よりも好む変な人。

「……何だその目は」

「いいえ、何でもありません」

知らず知らずの内、彼に向かっていた不満げな視線を咎められた。人の気も知らないで、と心の中で嘆息してから、お望み通り顔を背ける。

蝙翔鬼先輩の眉がひく、と不満そうに歪むのが横目に見えた。何か失敗しただろうかと思うのと、強い力で顎を掴まれるのは同時だった。
先程の位置まで強引に顔を戻し、私の視界にはまた先輩が映る。

それを確かめると、先輩はまた興が冷めたと言うように私から目を逸らした。

時折先輩は、こういうよくわからない行動をする。



「先輩」

「何だ」

「私って先輩の何なんでしょうか」

「……………」

「……………」



「………後輩じゃないか」

「そうですよね」

先輩がこちらを見ないまま呟く言葉に、私はいつもどおり同意の相槌を打った。



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