□SS/過去拍手
58ページ/58ページ

(田沢慎一郎)




「インイチがイチ!インニがニ!」

(……ひさかたの、光のどけき春の日に――)

「インサンがサン! インシがシ!」

(しず心なく、田沢の九九斉唱――字余り。
……うーん、やっぱりいつ聞いても、田沢の九九はいいわ……)

「九七 六十三! 九八 七十二!」

(心が洗われていくみたい……万雷の拍手の用意をしておかなくては……)





「――九九 八十一!!」





「…………えっ?」

「は?」

「な、なんじゃと……?」

「お……おい田沢……お前今、なんて……」

「ぼ……僕の耳、おかしくなったのかな? 今……田沢の口から、九九八十一って聞こえたような……」

「んな、ば、馬鹿な事言っちゃいけねえよ。
田沢が……あの田沢が、九九八十一なんて、そんなこと言うわけねえだろうが。な、なあ、そうだろ田沢?」

「たたた、た、田沢一号生! き、貴様、今言った言葉を、落ち着いて、もう一度言ってみろ!」

「――……教官殿。それに皆も、何をうろたえておるのですか。
九九は八十一……そんなこと、小学生でもわかることではありませんか」

「あ……あ……!!」

「い、いかん!椿山がショックで倒れたぞ!」

「泡を吹いてる!担架だ!担架を早く持ってこい!」

「いやああ椿山!しっかりして!
田沢もしっかりして!自分を取り戻してえええ!」

「田沢……!お前、一体どうしちまったんだ……!」

「………………………くくっ」

「田沢……?」

「くく、ふ、くっくくくく」

「た、田沢……お前……ついにおかしくなっちまったのか……!?」



「――――ウワーッハハハ!! このばかたれどもが、まんまと騙されおって!!
今日は四月一日、つまり四月馬鹿の日じゃ!嘘をついても許される日よ!
この男塾の人間コンピュータである田沢慎一郎が、九九八十一なんて間違うはずがなかろうが―――っ!!」

「た……田沢……てめえ……。
……っこの野郎、おどろかせやがって!!」

「ああああよかった……!田沢がおかしくなったわけじゃなかったんだね……!田沢の九九八十八はこれからも聞けるんだね……!」

「ちくしょう見事に騙されちまったぜーっ!やっぱりお前は男塾の頭脳じゃあ!」

「この鬼ヒゲまでたばかるとはなんたる頭脳……貴様がこの日本を背負って立つ日も近いというわけか……!!」

「いっちょいつものやつで締めてくれよ田沢―――っ!」



「九九 八十八!!!!!」



「うおおぉおぉおぉおおおおぉ!!!」

「たーざーわ!たーざーわ!」








「……本当のアホ学校かここは」

「やっぱり米国に帰るんだったぜ……」




.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ