□SS/過去拍手
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(鎮守直廊)



「大変だ……詳細はまるっと省くが、ひょんなことから蝙翔鬼先輩が全世界の人間から命を狙われる存在になってしまった……。
つまり今現在、この世で私だけが蝙翔鬼先輩の味方!唯一の理解者!ただ一つ残った心のよりどころ!
これはがっつり共依存展開あるぜ!こうしちゃいられない、待ってて先輩!今私がおそばへ馳せ参じま…………ん?」





「――――ったく、全世界を敵に回したくらいでなんだその情けない面は。お前は確かに性根が曲がって枯れてへし折れとるが、良くも悪くもそうでかいことができる奴じゃないことくらい知っとるわい。
ウジウジしとらんでさっさと立ち上がらんか。ただでさえ陰気な貴様がこれ以上湿っぽくなったらこっちにまでカビが生えちまう」

「君がどんな扱いを受けようが正直知ったこっちゃありませんが、誉れ高き鎮守直廊三人衆の名が穢れるのは実によろしくない。邪鬼様にも申し訳が立たないじゃありませんか。
……君の汚名を雪ぐ手伝いをする理由など、それだけでいい。ただし高くつきますがね」

「……独眼鉄……ディーノ……」

「俺たちは一蓮托生だ。今までだってそうだったし、これからもそれは同じだ。
万針房の番人として、一人の男として、仲間として、お前を見捨てるような真似ができるかよ」

「ホッホッホ、そのくらいでやめておやりなさい独眼鉄。蝙翔鬼が感極まって泣いています」

「……だっ、誰が泣いとるか!古臭い浪花節に飽き飽きして欠伸が出ただけだ、この馬鹿共が!」



(……私の目論見は外れたはずなのに……野望は潰えたはずなのに……。
それなのにどうして、こんなにも心が満ち足りているんだろう……)





* * * * *






「―――――というのが私の今朝見た夢なんですよ?
それなのにどうして現実の先輩方は、一個残ってた大福を誰が食べたかなんてつまらない理由で喧嘩してるんですか?
そんなのあんまりです!もっと私の脳内の先輩方を見習って、三人の心を一つにしてください!」

(何だこいつ……)

(何だこいつ……)

(何だこいつ……)



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