□SS/過去拍手
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(ゴバルスキー)



「あらぁ、格好いいワンちゃんたちねえ。ハスキー犬?」

「……ああん?ババア、貴様これが犬っコロに見え…………もがっ」

「二頭ともシベリアンハスキーなんですよー。ちょっと目付きは悪いけど男前でしょー」

「ええ、ええ、本当に精悍な顔つきだこと。まるで狼さんみたいねえ」

「みたいじゃねえ、ほんも…………ぐむっむぐぐ!ぐふっ!」

(ゴバルスキー!もう喋らないで!)

「じゃあね、お嬢さんと……お父様かしら?気を付けてお散歩してね」

「ありがとうございます、お婆さんもお気をつけて。この辺は例のいかれた私塾が近いですから。あはは……。

――――もう、ゴバルスキー」

「お前……口だけならまだしも鼻まで押さえることなかろうが……」

「だって余計なこと言うんだもん。本物の狼を散歩させてるなんて近所にバレたらおおごとよ。『また男塾か!』の大合唱よ」

「それにしたって由緒正しいシベリア狼に対してシベリアンハスキーとは何事じゃ。まっっったく違うわい」

「ニホンオオカミと柴犬みたいなもんでしょ。かなり近い種族だと思うけど」

「しかも言うに事欠いて『お父様』だとぉ?わしにこんなでかい娘がいるように見えるのか!」

「耳元でわめかないでよ。私だってこんな犬耳つけた世紀末に生きてそうなおじさんと血が繋がっていると思われたのは非常に心外なんだから」

「なにぃ!?このワイルドかつ渋い男の魅力もわからん小娘が生意気言いおって……!
わしが夜這いのひとつでも仕掛けたらお前のようなおぼこなんぞイチコロなんじゃぞ!」

「ロムルス、レムス、今日は一緒に寝ようね。怖くて臭いおじさんが来たら守ってね」

「がうがう」

「うぉーん」

「わ、わしを裏切るのかお前たち……!
そもそもわしゃ臭くないわ!三年物のフンドシを無理やり脱がして勝手に洗濯したのはお前だろうが!」



(何だか賑やかに語らってるわ。本当に睦まじいわねえ、あの親子)



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