□SS/過去拍手
26ページ/58ページ

(鬼ヒゲ)



「じょ、じょ、女子大生のおねえさん、わしとお茶でもいかがですか」

「………………いいですけど」

「あ、あんたが今日三十四人目なんじゃ!そんなこと言わずに……。
……はっ!?い、い、今、いいって言ったのか!?」

「そこの喫茶店でいいですか?ケーキが食べたいです」

「お……おお!付き合ってくれるならケーキなんぞいくらでも奢ったるわい!」

「一個でいいですよ。無理しないでください、薄給なんだから」

「まあ確かに金はないが、ここは男としてだな…………ああん?
何であんた、わしの懐事情なんぞ知っとるんだ」

「男塾なんて学費も払わないような塾生ばかりなんだから、そこの教官が高給取りな訳ないじゃないですか」

「……な……どうして、わしが男塾の教官だと……?
あんた、まさか妙な妖術でも……」

「もー、にぶちん。たった二、三年で顔忘れちゃうんですか?
それとも、私だとわからないくらい女らしくなったって好意的に受けとるべきなんですかね。―――教官殿」

「…………あ……あ、あああっ!!?
おっ、おまっ、……みょうじ!!」

「うーん、しかし『教官殿』だと何だかいかがわしい関係みたいですね。
本名教えてくださいよ、教官殿。そっちで呼びますから」

「ば、ばかたれぃ!教え子と知って遊べるか!」

「もう卒業したんだからいいじゃないですか。
教えてくれたらお茶でもその先でもお付き合いしますよ」

「はああ!?お前何を言っ……そんな破廉恥な娘に教育したつもりは……こら腕を組むな!」

「やだな、教官殿じゃなきゃこんなことしませんよ。
それより早く教えてくれないと襲われたって大声出しますよ」

「脅迫しとるのか貴様……!」








――鬼田じゃ、鬼田軍吉!これで満足か!

――ふふ、じゃあ一緒にお茶しましょうか。軍吉さん?

――いい加減に離れんか、このふしだら娘が!



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ