□SS/過去拍手
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(ヨーコ)



頭からずぶ濡れになった彼女は、呆然としたままただ立ち竦んでいた。

ぎらつくネオンの下、騒がしい音楽や人々のどよめきとは比例するように静まり返る彼女の周辺。さっさと引き上げる筆頭の背と女の子を交互に見ながら、なまえはあわあわと懐のタオルを取り出した。

しまった。こんなときに限って使い古したキャラクターものタオルだ。
まあ、しかし、ないよりはマシだろう。

「よ……良かったら、使って」

「……え?」

「女の子なんだし、自分の身体は大事にした方が……。信頼できる人と健全なお付き合いをした方がいいというか……。
正直お付き合いすらしたことない私が言うことでもないかもしれないけど……あ、いや今のは余計だった。
…………じゃあ」

返さなくていいから、と言い残して皆の後を追おうとするなまえの袖を、綺麗に整えられた桃色の指先が掴んだ。

「な、なにか?」

「……このタオル、ヘズニーランドで買ったの?」

「えっ?あ……あぁ、そうだったと思う。子供の頃のだから、ちょっと色抜けてボロボロだけど……」

「やっぱり。……私も、同じの持ってるわ」

栗色の髪から滴る水分を手慣れた様子で吸いとりながら、ヨーコは複雑そうに笑って「ありがとう」と言った。

「聖肛漫女子大学一年、ヨーコ」

「え」

「あなたは?」

「あ……お、男塾一号生、みょうじなまえ」

「どこからどう見ても女の子だけど」

「それについては諸事情ありまして」

「そう、まあいいわ。おいおい聞かせて」

まだしっとりと濡れている髪を軽く振る。なまえの袖を掴む手をするりと滑らせ、ヨーコは指同士を編むように絡めた。

「しばらくはあなたに付き合ってもらおうかしら」

「えっ」

「健全なお付き合いってどんなものなのか、私に教えてちょうだい。なまえちゃん」









「――というわけで、ヨーコちゃんとお友達になったよ。桃のお陰だよ」

「何がどうしてそうなった?」





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