□SS/過去拍手
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(飛燕)



温度と湿度の波状効果をモロに受け、不快指数もうなぎのぼるこの季節。
じめじめむしむしという擬音そのものを着ているような錯覚さえ覚えて、私はふらりと机に突っ伏した。

これが男だったら「よっしゃ!いっちょ脱ぐか!」という勢いですぱぱんと裸になることもできるかもしれないけど、悲しいかな私は男所帯の末席に置いてもらっている女である。そんな奔放は許されない。

ああ、せめて、夏服がほしい。



「というあなたの願望に応えて夏服を製作いたしました」

「人の心を読むのはやめて飛燕」

「ほら、このプリーツスカートなどかなりの自信作ですよ」

「あ、ほんとだかわい……ってセーラー服じゃないこれ!」

「貴女の制服姿は正直見ているこちらまで辟易するというか鬱陶しいんですよ。夏の間はこれで過ごしていただけないでしょうか」

「無茶言わないでよ、ここ男塾だよ」

「無茶というなら貴女の存在がこの男塾で一番の無茶ですよ」

「そ、そんな……私だって……そんなことは重々承知だけど悪目立ちだけはしないように毎日頑張って……」

「ええいそんなことはどうでもいいんです。
いいからこの適度な露出とほんのり透けて爽やかな夏の色気を演出する白セーラー服を早く着てください。男塾塾生の、ひいては世界平和のために早く」

「…………飛燕、もしかしなくても、暑さにやられてるでしょ?」



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