□SS/過去拍手
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(宗嶺厳)

「あ、嶺厳ちょっと」

「ぅぐ」

ぐぎり、と嶺厳の首から鈍い音がした。
おそらく咄嗟に伸ばした私の手が、彼の長く垂れたお下げを引っ張ったために起こった事象と思われる。
などと冷静に事の次第を分析している間にも、嶺厳は丁寧に編まれた三つ編みの根元を抑えたまま静かにうずくまっていた。

「………大丈夫?」

「お、前な……」

衝撃の強かったであろう個所を撫でようと手を伸ばしたら、すぐさま払われる。

キッとこちらを睨みつける瞳が若干潤んでいたことに、私は気付かなかった。気付かなかったとも。

「ごめんね」

「ごめんで済むか」

報復とばかりに高威力のでこピンを喰らわされた。
さすが翔穹躁弾の使い手、動作に隙がない。その上とんでもなく痛い。5分後には絶対アザになるやつだ。

「悪気は無かったのに……」

「なおのこと問題だ。
……俺に何か用だったのか?」

「ああうん、そうだった。あのね嶺厳、あの………」

「…………」

「………………」

「……………………」

「…………何で呼びとめたんだっけ?」



私の額が再び、ばちんっと音を立ててはじけた。




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