□SS/過去拍手
6ページ/58ページ

(卒業後、剣桃太郎)

ベッドの上、腰かけているなまえの両横に手をついて桃はゆっくりと身をかがめた。
相変わらず底の見えない笑顔で、けれど何かをねだるような甘さをわずかに滲ませて、なまえを見つめる。

雄々しく引き締まった身体を包む白いワイシャツ、その襟から伸びるネクタイになまえはそっと指をかけた。
薄紅色の細い指先が結び目に触れ、静かな空間に、しゅる、という衣擦れの音がかすかに響く。

朝、なまえが結んだネクタイ。それを夜闇の中ほどくのもまた、なまえの役割だった。

「……お風呂、入らなくていいの?」

「二度手間だろう?」

そう言いのけて細められる彼の眼が、すでに微熱を孕んでいるこの身体を見透かしているように思えてなまえは思わず顔を逸らす。

その顎を捕えて、桃は啄むようなキスをひとつなまえの唇に落としてから――お返しとばかりに淡いネグリジェのリボンに手をかけた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ