□プレゼントは下心
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――背中に、戦慄が、走った。

強張って動かない、いや動きたがらない首を無理矢理回し、振り返る。

その先には、予想通りかつ私にとっては言葉通りの、地獄の魔術師がいた。

……おいおい、ちょっと待って下さいよ。ここ二階ですよ。
そして私の部屋には、鍵がかかってたはずなんですが。

「……どこからお入りに?」

「おやおやなまえ君。何もないところから現れるのが、魔術師というものなのですよ?

フフ、まあ御安心を。清らかな乙女の素肌を覗き見るなどという、非道な行いはしておりませんから」

「…………」

思わず胸の前で両手をクロスさせてしまう。いや、決して先輩の発言を信じていないわけではない。わけではないが、ああそうですかと納得できる状況でもない。

いくら地獄の魔術師だろうが、いきなり部屋に出現できるわけがない。私は窓の方向を向いていたから、ディーノ先輩は間違いなくドアから入ってきたはずなのだ、どのような手を使ったとしても。

……しかし今、ディーノ先輩の背後に見えるドアは、鍵がかかっている。ということはどういうことかというとだ、先輩は鍵を開けて部屋に入った後、また鍵を閉めたということになる。



……あれ、嫌な予感しかしないのだけれど。

「しかしなまえ君、本当に君は愛らしい。つい、年甲斐も無く邪な感情を抱いてしまいそうになる…」

「ちょ、や、やめて下さいよ先輩。目が、目が異様な光を放ってますよ」

「フフ、突然現れて驚かせようとしたら、あられもない姿でいる君が悪いんですよ。
それも私の贈った服に着替えているなんて。これでは昂ぶらない方がおかしいでしょう」

「……はああ!?やっぱりしっかり見てるじゃないですか!!」

「覗こうという意思は全くありませんでしたよ?
ですから覗いたのではなく、不可抗力です」

「詭弁よ!理屈をこねまわせば私が頷くと思ったら大間違いなんだから!
この似非紳士!矢印頭!片丹者!
ヘルズマジシャンなんて誰にも呼ばれてなかったくせにっ!!」

言ってはならないことを叫ぶ私を、ディーノ先輩はにこにこしながら見ていた。

そしてやがて酸素を使い切り、肩でぜーはーしている私の顎を滑らかな仕草でとらえ、上向かせる。



……そこには、「このガキャア、よっぽど命いらんらしいな」と言いながら刃物を抜いていたころの、ディーノ先輩がいた。

「………………仰いたいことは、それだけですか?」

「ひ――い、いやあああああ!!
来るなこのエロ男爵うぅううぅ―――っ!!」




了.




終わろう。
まったく、私はディーノを何だと思っているんだろう。本当ごめんなさい。

この後何故か鎮守の二人が助けに来てくれるって私信じてる。



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