□wake up!
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うわやだ恥ずかしい、と心の中だけで悶絶しつつ、なまえは相変わらず不機嫌そうにしている伊達に向かって照れ笑いをした。

「あ、あはは……ごめんなさい。昨日寝苦しくて眠れなかったからつい、うっかり」

「…ったく、たまたま見つけたのが俺だったから良かったがよ。
他の奴だったら、どうなってたか怪しいもんだぜ」

……いや、おそらくどうにもならなかったと思うが。
あの気のいい連中に限って妙なことはしないだろう、上級生ならまだしも――というのは冗談だが、なんてことをなまえはまだぼんやりしている頭で思った。

だがこの口ぶりからすると、どうやらさっきの不穏なささやきは幻聴だったらしい。
…多分。

なまえの怪訝そうな瞳にも全く動じず、伊達はなまえの隣にどっかり腰を下ろした。そして、その腕の内にあるシーツをじっと見つめる。

「直してたのか、それ」

「そう。ちょっとほつれちゃってたみたいだったから」

「まだかかるのか?」

「ううん、もう終わり。
……で、片付けようとしたらふら〜っと、へへ」

なまえはそう呟きながら立ち上がると、シーツをばさっと広げる。綺麗に縫われたそれを四つ折りに畳み直して片手に抱え、なまえはにっこりと伊達に笑いかけた。

「えっと、ありがとう、伊達君。起こしてくれて」

「礼が遅え。
…ついでに部屋まで送ってってやるよ。途中で倒れられちゃかなわねえ」

「な、なによ。いくら私だってそんな………うふぁあ」

途端に間の抜けた大欠伸が口から零れて、慌ててなまえは口を押さえる。
しかし時すでに遅く、なまえの後ろでは伊達が肩をひくひく震わせて笑っていた。

「お前…。言ってるそばからそれじゃねえかよ…」

「そ、そんなに笑わなくたって!」

そんななまえの抗議も聞かず、伊達はしばらく笑い続ける。

ひとしきり笑った後、伊達はなまえに近づくと、平然とした様子でなまえを小脇に抱えあげた。

「…ちょ、え、え!?」

目を丸くして慌てるなまえに対し、伊達は平然としたもの。じたばたと抵抗するなまえなど気にかける様子も無く、そのまま食堂を抜けて廊下に出た。

「何、何してるの伊達君!?」

「送ってってやる、って言っただろ」

「いや、なにも抱えあげなくても!しかもこんな荷物みたいに!」

「…何だよ。もっと上品に扱えってのか?」

にや、と笑うその表情の悪どさになまえは顔を真っ赤にしつつ首を大きく左右に振った。
もうとっくに、眠気なんて吹っ飛んでしまっている。
 
「違います!
一人で歩ける、歩けるから!」

「うるせえな。
あんまり暴れると、俺の部屋連れ込んじまうぜ」



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