□ヒーローの必殺技
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「みょうじ、どうしたんだその指は」

一番見つかりたくなかった人物に見つかるというのは、落胆を通り越してもはや怒りすら湧いてくるものなのだとなまえは悟っていた。

(神も仏もいないくせに、鬼は現れるんだなあ)

などという失礼な考えを脳内で蹴り飛ばし、なまえが振り返った先には、やはり思い描いた人物がいた。

その強面を訝しげに顰め、こちらを見ている羅刹になまえはどうしたものかとしばしの思案を巡らせる。

そうして思いついたのは、

「突き指しました」

見ればわかることをそのまま言葉にすることくらいだった。

案の定、羅刹の眉間の皺が深くなる。

「そんなことは包帯を見ればわかる。
俺が聞いているのは、理由だ」

そんなことはわかっています、言いたくないんです。
──と言えればどれほど楽だったろうか。

だがしかし、あの表情は明らかになまえが何をしたか感づいている顔だ。もはや誤魔化せるとも思えない。

そして羅刹の次に放った一言は、すでに追い込まれたなまえにとっては決定打だった。



「何故両手を、しかも人差し指と小指などという組み合わせで突き指したんだみょうじ」



「………よいこの皆は真似しちゃ駄目だよ、と仰ってくれなかった羅刹先輩にも非はあると思いませんか」

「馬鹿者!」






ヒーローの必殺技
(…って、真似したくなるものじゃないですか)



了.



発泡スチロールって意外と固いんですね。
兜指愧破は、正しい修行を積んでから行いましょう。


 

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