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□或る過負荷の独白
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負安、負穏、負愉快、負可解、負快、負吉、負浄。
大凡考え付く限りの“負”を無造作に陳列したような、僕。
自覚する以前、出生したその時点で僕は負け組だった。
余りにも負け過ぎていて、余りにもずれ過ぎていて、余りにも欠け過ぎていて。
他人と比較される事すら憚られた僕は、つまりは価値すらも存在しない。
嗚呼、でもそもそも僕自身は本当に存在を認められているのかな?
“人間は無意味に生まれて無関係に生きて無価値に死んでいく”
――幼い頃の僕はずっと馬鹿みたいにそれを信じていたんだよ。
だってそれは、まさに僕自身の始まり方と終わり方の事だもんね。
それを“人間”と称さなければ、僕は一体何だと言うんだろう?
そんな言葉を吐けたあの頃の僕には、実はまだ救いがあったのかも知れないね。
自分の存在に懐疑と不安を抱きながら。
他人の視線に嫌悪と恐怖を抱きながら。
そうして他人を否定する事で自分を肯定するなんて、まだまだ“普通”の領域だったのに。
現在の僕にはそんな行為さえどうでも良くなってしまったよ。
何かの為に生まれて誰かと関係を成して生きて価値を残して死んでいく。
奇麗で醜い、決して独りでは成し得ないそんな生き方。僕は縋ってしまった。
その時始めて本当の意味で、僕は全てに於いて完全に“負”け狗に成り下がったんだろうなぁ。
大事な人と腐り切って、
大事な人を凌辱して、
大事な人と堕落して、
大事な人を隔離して、
大事な人と破滅する。
自発的な想いは、それさえもマイナスだった。
記憶の片隅でいつも僕を狂わせたのは、消毒液の匂いと君の笑顔。
耳に焼き付いて離れない、無責任な救いの言葉。
*
(善吉ちゃん。
僕を救いようの無い人間にしたのは、君だ。)
*
短篇祭り(?)2作目です。
何故だか詩っぽくなってしまう。