06/23の日記
16:14
鉢竹
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「意外と、…優しい」
ちらっと窺うように相手を見れば、全然納得していないという表情を返された。
眉根を寄せて言葉を詰まらせた竹谷に、組み敷く相手は短い距離を更に詰めた。
「っ、面倒見が良い…!」
「それだけか?ハチ?」
覗き込むように竹谷を見る琥珀色がくるりと動いて更に先を促してくる。
手は布団に押し付けられているので睨んで抵抗を表してみても、三郎はただ静かに体重を掛けて竹谷を見下ろすばかりだ。
「それじゃあ、満足できないな。ハチ」
「ぐっ!……なんだかんだで見捨てない、とかか?」
三郎に尋ねても、さあ?と一瞬口元に笑みを描くだけで全然満足していないと表情と雰囲気が語っている。
いったい何なんだと竹谷は喚きたい気持ちになった。
自分が三郎に言い包められてこんな状況になったのは分かっている。
けれども、恥ずかしいのを我慢して相手の要求にこたえているのにその相手である三郎は一向に良しとしてくれないのだ。
「もういい加減にしろよっ!三郎!!」
「まだ駄目だ」
ついに藻掻いて抵抗をみせた竹谷を押さえつけるように力が加わって、更に睨まれてもしまった。
若干涙目になりつつ上を見上げた竹谷は三郎の拘束が解けないと分かると、体から力を抜いて息を吐きだした。
ここまで恥ずかしい思いをしたんだ、全部ぶちまけてやる。
そう自棄を起こした。
「ハチ?」
「……手が冷たくて気持ちいいところ」
驚いて一瞬力が抜けている隙に竹谷は三郎の手と指を絡めて手を繋いだ。
互いの指が擦れ合う感触に目を閉じて、今度は見つめるように三郎に視線を向けた。
「この手で俺を撫でるところ」
ぎゅうっと繋いだ手を握る。
「この腕で俺を抱きしめてくれるところ」
その時を思い出してうっとり目を閉じる。
「足が速くて、すぐに俺の所に駆けつけてくれるところ」
布団に押し付けられていた足を三郎の足へと絡めて笑う。
「その目が俺を見てくれるところ」
驚きを乗せる琥珀色に想いを込めた視線を送る。
「三郎の唇が、俺のと重なる、ところ」
唇に視線を落とし、ふわりと笑って三郎を見た。
「ぜんぶ、すき」
自覚する程とろけた目で三郎を見て、何かを言おうとした三郎の唇が動くが、言葉にはならないで止まってしまう。
その唇に竹谷が自分の唇を押し当てれば、強い力で同じ行為が返ってきた。
唇が合わさり、舌で開かれ、口内で舌を絡ませ合いながら目を閉じた竹谷は、解放された腕いっぱいに愛しい人を抱きしめた。
顔を離した三郎が真っ赤に染まっているのを見れば、自分の恥ずかしさも報われた気がした。
すきなところをぜんぶいって
end
ちょっと不安になった三郎の意地悪に付き合ってあげる竹谷です。
三郎目線も面白そうですねー。
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