綾タカ

□無防備な君
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ふと目を覚ますと、何時もと変わらない自分の部屋の天井が見えた。
体を動かそうとしたが、何かが乗っている様で少し動かしづらい。
少し体をずらすと、上のものがごんと言う音と共に落ちた。
それに解放された体を上げると、上に乗っていたものの正体が分かった。

「何してるんですか、タカ丸さん」

私の体に乗せていた頭が床に落ちても、タカ丸さんは起きる気配がない。
それどころか、ふわふわと笑いだした。
笑顔のまま、幸せそうに寝ている。


会いたい人に会えたのに、その人物は眠ったままだ。
何の為に今日は穴掘りをやめて部屋で待っていたのか分かりはしない。
第一、無防備すぎる。
そう考えて、自分もタカ丸さんが来た事に気付かなかった事に気付く。
そういった事には私は敏感であるはずなのに。

「貴方に慣れ過ぎたんですかね」

そうタカ丸さんに言ってやると、寝ている彼は一層笑顔を濃くする。
呼吸から、寝ているのは確かなのに、私の言葉に反応するとは。
本当に興味深い人だ。
ふにゃりとした笑顔のままのタカ丸さんに、私はそっと手を伸ばした。

「貴方のせいですよ」

むにっと頬を引っ張ってみても、タカ丸さんは相変わらず起きる気配がない。
それに顔を覗き込むと、僅かに眉を顰めただけでまた笑顔に戻った。
これは無防備では済まされないのではないだろうか。
人として危機感がなさ過ぎる。


「3秒以内に起きないと襲いますよ」


少しの悪戯心と、危機感のなさとでこんな事を言ってみる。
それでもタカ丸さんは笑顔で寝続けていたので、私は遠慮なく頂くことにした。
ちゃんと3秒待ったことだし。
彼に覆い被さると、唇に口付ける。
ついでに鼻もつまんでやる。



「――んんっ!?」

「おや、おはようございます。タカ丸さん」

「はれ?…綾部君?あ!!僕、寝てた!?」

えへへと笑うタカ丸さんは、この状況にでさえ何の危機感も抱いていない。
いくら年下と言えど、私は男で、恋人なのに。
何だか自分が彼にとって男と見られていない様に思えて、むっとしてしまう。

「先程、了解を貰ったのでいただきますね」

そう言って再びタカ丸さんに口付けた。
今度はもっと深く。

「ふ…っん!綾部君?まっ……」

その言葉も封じるように深く唇を貪る。
私の体を押し退けようとする彼の手は、床へと押し付けた。
ひと通り堪能すると、唇を離すが顔は未だ近付けたままだ。
乱れる息と、息を吸おうと口を開くタカ丸さんは、私の視線に気付くと涙で潤んだ瞳で見上げてきた。

「あの…勝手に寝ちゃって、怒ってる?ごめんね。綾部君が気持ちよさそうに眠ってるの見たら、僕もいつの間にか寝ちゃったみたいで。……綾部君?」

「別に、それに怒って口吸いした訳ではないですよ」

「え?じゃあ…なんで?」

「色々な意味で危機感がなく、無防備だったので」

分かって頂こうと思ってと続けると、タカ丸さんは困った顔をして首を傾げている。
それでもタカ丸さんは分かってないみたいだ。

「…もういいですよ。無防備なのは私の前だけにして下さい」

そう言って頬に口付けると、その頬が桃色に染まる。

「う、うん?」

「では、続きしましょうか」

「へっ!?あの、…っちょ、綾部くぅぅん!??」




ああ、やっぱり貴方は起きて色々な表情をしているのが好きです。







end

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