綾タカ

□内緒に出来ない事
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「しかし大変ですね、タカ丸さんも」

一通り落ち着くと、綾部は囲炉裏の傍に居るタカ丸の近くに座りながら言う。

「そうでもないよ〜、家がどの城に属した忍者か分かるかもしれないから」

どこか嬉しそうに言うタカ丸は、まるで危機感がない。
そんなタカ丸に、綾部はタカ丸の手をぎゅっと手を握って言った。

「何があっても私が守りますから」

無表情ながらも真剣に言ってくる綾部にタカ丸は嬉しくなった。
自分を真剣に心配してくれてるのが伝わってくる。

「うん。ありがとう、綾部君」

ふにゃりと頬を染めて笑ったタカ丸が可愛くて、綾部は額に口付ける。
それにタカ丸と周りの人が固まるが、綾部は気付かない。

「タカ丸さんは可愛いですね」

時も場所も場合も読まない綾部は、自分の思った事をそのまま口に出した。
気まずい空気が流れ、タカ丸が動けずにいるとようやく気付く。

「ああ、すみません。ここは学園ではなかったでしたね」

そう言って、更に爆弾を落とした。
タカ丸はもはや石化したみたいに動けずにいると、綾部はタカ丸にすり寄る。

そんな状況に、まず覚醒したのがタカ丸の父だった。

「……タカ丸、この方とはどういう関係なのかな…?」

その言葉にタカ丸ははっとして父の方に顔を向ける。
額とはいえ口付けを父に見られた事を頭では理解するが、心が付いて行かない。
タカ丸はただあうあうと顔を赤くして父を見ているだけで、何も言う事が出来ない。

そんなタカ丸の代わりに、その言葉に答えたのは綾部だった。

「タカ丸さんとはお付き合いさせていただいています。タカ丸さんは大切にします」

そこまで綾部が言って、やっとタカ丸は動き出す事ができる。

「あやっ、綾部君!ちょっと待って、あの……父さん!えっと…」

それでも混乱したままの頭できちんとした言葉が出ない。
その間にも、タカ丸も周りの人間も無視して二人の会話は続く。

「そうか、タカ丸にそんな人が…。子供は親の知らない間に成長するのだな」

「お許しいただけますか、お父上」

「綾部君、だったね?タカ丸は帰ってくる度に楽しそうに学園の事を話す時、必ず君の事も話しているよ」

「タカ丸さんが私の事を…」

父の言葉に嬉しそうに綾部はタカ丸を見る。
タカ丸は顔を赤くして、伏せる。
そんなタカ丸を見て、父が口を開く。

「綾部君、タカ丸をよろしくお願いします」

そう言って頭を下げる。

「はい。タカ丸さんは私が幸せにします。お任せ下さい」

にっこりと笑った綾部にタカ丸は、なんか違うよぉと言っていたが、綾部と父は微笑むだけだった。








本来なら微笑ましい筈の三人の姿に、その場に居た皆が思った事は同じだった。




(((こんな時にこんな場所でそんな話をするな!!)))







end

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