綾タカ
□内緒に出来ない事
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内緒に出来ない事
綾タカ
『狙われた斉藤家の段』よりネタバレ注意
タカ丸は土井の家に向かっていた。
何でも、ドクササコの忍者が暗殺者を斉藤家に差し向けて来ているからだ。
皆が用心深く辺りを見回している中で、当事者の斉藤親子だけが緊張感のない様子で歩いていた。
「父さん、店の方は大丈夫ですか?散らばった小物とかは片付けましたか、まだ色々と荒れてますけど」
「タカ丸、心配する事はない。この物語のお約束で、明日には元に戻っているから」
「それもそうですね〜」
そんな二人に、先を歩いていた土井からの注意の声が飛ぶ。
「二人とも狙われてるんですから、もうちょっと緊張感を持って下さい!!」
土井の横では、庄左ヱ門、金吾、団蔵も苦笑いをしている。
あはは〜とタカ丸が笑っていると、土井から笑ってる場合か!と再び声が挙がった。
道行く途中でしんべヱ、喜三太に会うと、風魔からの手紙を受け取り土井家へと急いだ。
家に着いて直ぐ、庄左ヱ門、金吾、団蔵が落とし穴に落ちたのをみて、タカ丸はあれ?と思った。
とても見覚えのある落とし穴だと思ったのだ。
落とし穴に見覚えがあるというのも変なものだが、自分が普段落ちているのに似ていた。
立派な落とし穴に驚いていると、入口の奥に滝夜叉丸の姿があり、隣の綾部の落とし穴を自分の事みたいに自慢し始める。
やっぱり綾部君かぁとタカ丸は思うと、滝夜叉丸から綾部へと目を移すと、目が合った。
「綾部君」
ぽそりとタカ丸が綾部の名前を言うと、滝夜叉丸が自慢を中断した。
「私も居ますよ、タカ丸さん!!」
滝夜叉丸のかわいい発言にタカ丸は微笑み、こんばんは滝夜叉丸君と言うと、滝夜叉丸は嬉しそうにする。
綾部は目をずっとタカ丸に向けたままで何も言わず、タカ丸はその視線に少し恥ずかしくなって、綾部の方を見る。
「こんばんは綾部君!」
と言うと、綾部は嬉しそうに微笑むと初めてタカ丸へと声を掛けた。
「今晩はタカ丸さん」
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