孫富
□冬至の南瓜
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「なあ、ところで南瓜なんて高価な物よく学園の夕食に出るな」
一通り作兵衛の説教が終り、というか色々と諦められた三之助が唐突に言い出した。
それに、落ち込んでいた数馬、それを慰めていた藤内、わははと笑っていた左門、ふて腐れた作兵衛、黙々と食べていた孫兵が三之助に目を向ける。
「だってさ〜、南瓜っつったら南蛮から渡って来た作物だろ?簡単に手に入る物じゃないじゃん」
そう言われて改めて各々の御前をや見ると、確かに小豆やら南瓜やらと中々貴重な食べ物が並んでいる。
「これが南瓜という物なのか!初めて食べるが、甘くて美味いな!!」
南瓜の煮付けに箸を付けて左門は嬉しそうに頬張っている。
「南蛮の作物!?そんな珍しい物を今日の夜食べちゃって、僕、明日の運使い果たしてないかな??」
「そんな訳ないだろ、数馬。でも、今日は何か特別な日なのかも知れないな」
「いや、ただの学園長の我が儘って線もあるんじゃねぇか?」
それぞれが、それぞれの考えを言う中で、孫兵は今日感じた違和感についてぽつりと漏らす。
「そういえば、今日は日が沈むのが何時もより早かったな。実習中に、夜行性の動物や虫達が動き出す時間が早かった。それと何か関係あるのかな」
孫兵の言葉に、三年生達はばっと一斉に孫兵を見る。
「凄いな孫兵!よく気付いたな!」
「伊賀崎はそれだけ動物達をよく見てるからだろ」
「うわ〜、僕も落とし穴から日が沈むの見てたけど全然気付かなかったよ」
「本当に生き物に対しての変化は敏感だな、孫兵」
「俺もそういう変化には気付かなかったな」
そう言って、孫兵に称賛を送る三年生達の後ろから、ぬっと影が出て来る。
「伊賀崎君の洞察力はすごいのねぇ」
と言って来たのは、食堂のおばちゃんだった。
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