鉢竹

□好奇心によって境界線は破られる
2ページ/3ページ


忍術学園で一年からずっと同じ組に居て、それでも俺は鉢屋三郎という人がどんな奴かは本当には知らなかった。
俺だけじゃない、雷蔵を含めた全員がそうだろう。


三郎には境界線がある。
決してそこ以上には立ち入らせない。
雷蔵でさえも。



そんな風に決して踏み込めない領域を三郎が持っているって気付いた時俺が一番最初に思ったのは、面白い、だった。
だって、人の秘密は何でも暴いて穿って突いて笑っている三郎に絶対に人には触れさせない境界があるなんて、何時も餌食になる代表だった俺としては仕返しの機会だと思ったのは当然だろう。

勿論、本当に探られて嫌な事だったら俺だってそれ以上は踏み込むつもりはなかった。
でもどうもそうじゃないらしく、三郎が自分自身に施した枷のように俺には思えて、ならばその境界線を取り払ったらどうなるのか、取り払って見てみたいと思った。
ちょっとした興味本意でそう思ってしまった。


あの時、俺と同じく境界線に気付いていた雷蔵の止めときなよきっとハチが面倒なことになるよ、って言葉を聞いておけばこうはならなかったんだろう。



境界線にじわじわと近付いて行くことは楽しくて、普段は見れない顔が偶に見れたりすると嬉しくて、俺は気付けていなかった。
友人として戻れない位置にまで俺自身が三郎を侵していた事に。

腕を取られて振り返った時には三郎の唇に俺の唇は塞がれていた。

驚いたのは勿論、何より、三郎に触れられた事が嫌じゃなかったのが一位番驚いた。
俺は逃げ出したけどそう簡単に逃げられる相手じゃないことは俺が一番よく知っていて、やっぱり捕まってしまった。







「……どうしてこうなった…」

「お前が悪い」

「っ」

何も言い返せないのが悔しい。
睨む事でそれを伝えるが三郎には鼻で笑われてしまった。

寄りによって親友と思っていた奴と関係を持った次の日、隣で何時もより穏やかな顔の三郎を見てまあいいかと思った俺も三郎に相当境界線を侵されていたらしい。
どっちにしろ、もう逃げられはしいないのだから。
俺もここまできたら三郎を逃がす気はない、踏み込んでしまったのなら気兼ねなく好奇心に従おう。


もっと、三郎を知りたいと。




end

→あとがき
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ