鉢竹

□不器用な人たち
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そもそも、この学園で元忍者――それも元天才忍者である学園長の友人――を騙せる程の女装技術を持つ忍たまは限られていた。
六年い組の立花仙蔵はそれは素晴らしい女装であることは噂で聞いていたが、その噂以上に加虐的趣味を持つと噂される仙蔵に頼むという勇気は竹谷にはなかった。
六年は組の善法寺伊作は線の細い体と中性的な顔立ちから女装がとても似合うと聞いていたが、今回行く場所はそれなりに険しい、慣れない服装でそんな所に行ったら不運委員長という不名誉な冠を持つその人はぼろぼろになること請け合いだということで、竹谷は胸中で静かに却下した。


後輩で頭を巡らせてみるも、どれも厳しい気がした。
四年生は見な顔立ちがよく女装も似合うだろうが、竹谷は四年生に強い接点を持たない。
そしてとても我が強い彼らと課題を遂行できるかと考えると、何故だかとてつもない不安に駆られるのだ。
三年の後輩のい組の伊賀崎孫兵は、恐らく女装は似合うだろうが、虫を見ると我を忘れるという姿をこれでもかと見てきた竹谷には不安しかなく、そしてこの課題はまだ三年にはきついものでもあった。


そうなって来ると、頼める人物は同じ五年生となる。
竹谷自信、自分以外の四人なら女装姿を見た事があり、そしてそれは完璧だったのを知ってる。
ただ、誰に頼むかという点で頭を抱えることとなった。
一人以外なら快く受けてくれるだろう――何分、成功報酬は特別休暇だ――事は分かるのだが、課題を遂行させる為という点に置いては一番不安が少ない人物に頼む事が得策だ。
こうして竹谷は、唯一快くは受けてくれない人物に課題を共同でやってくれないかと頼みに行ったのだった。



「はあ?何で私が」

予想通り、にべもなく返された言葉に半ば肩を落としつつも、竹谷は食い下がる。

「成功報酬は特別休暇だってよ!!」

「いらない。雷蔵から離れるくらいなら勉強してた方がまし」

「学園長が帰って来るまで七日はあるだろうし、場所は往復で歩いて数日だって言ってたから期間も余裕があるぞ!」

「でもその間雷蔵と離れるだろ?却下」

「俺が雷蔵の代わりになるから!!」

「無理」

こうして竹谷の三郎勧誘は失敗に終わったのだった。
両手を畳に着けて、やっぱり三郎に頼むんじゃなかった行く前からやる気を奪われたと溜め息を吐くと、寝転がって本を読んでいた三郎が竹谷にようやく目を向けた。







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