現パロ
□桜色ピンク色
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桜色ピンク色
鉢竹 兄弟
見上げると満開の桜が目に映った。
見頃を迎えたとニュースで言っていた通り、今が一番綺麗に花開いている。
「よかったね、今日は晴れて」
隣の雷蔵兄ちゃんの言葉に頷く。
今日までは雨が降ったり止んだりと天気が悪かったけど、今日の空は青く晴れ渡っている。
「楽しみにしてたからよかったよ!……けど、」
俺が言葉を切って雷蔵兄ちゃんを見ると、不思議そうな顔をして首を傾げられた。
それに視線を外して、ゆっくりと回りを見渡した。
ガヤガヤとどこを見ても人がいて、笑ったり歌ったり叫んだりしている。
久しぶりの晴れに満開の桜と来れば、考えることは皆同じだ。
花見をしている人の多さに俺が顔をしかめると、俺の気持ちを汲み取った雷蔵兄ちゃんも困ったように笑った。
「しょうがないよハチ。ずーっと雨が続いてての久しぶりの晴れで、桜が見頃となれば皆来るよ」
それにしても人が多い。
公園内のそこら十にブルーシートが敷かれていて人はいっぱいだし、いつもは散歩道の道路には屋台が並び、人が通れる道は幅が狭くすれ違う人々がぎゅうぎゅうとしていて暑そうだ。
花見客が公園を埋めつくすなかで、俺達がいる場所は最高の場所だった。
他より少し高い丘の上で、その一番高い所に咲いている一番大きな桜の木の下に陣取っている。
人を見渡せる位置にいるのは少し気分がいい。
それもこれも昨日の夜から頑張ってくれたのは言い出しっぺでもある小平太先輩と、付き合わされた三郎兄ちゃんである。
その二人は今、シートのはじっこで爆睡中だ。
小平太先輩ならまだしも、寝起きは悪くても人がいれば直ぐに起きる三郎兄ちゃんが寝ているのは珍しい。
「よーし!皆揃ったね?」
場所取りしていた二人を除いて誰よりも先に来ていた伊作先輩の言葉に皆が頷いたり返事をしたりしている。
因みに伊作先輩が早くに来た理由は、いつもは何らかのトラブルで時間通りには来れないからと余裕を持って家を出たら、何事もなく花見会場に集合時刻の2時間前に着いたからという何とも伊作先輩らしい理由からだ。
皆の分のお弁当の半分も担当していたからきっともっと早くに起きたのだろう、目が眠そうだった。
「じゃあ長次」
伊作先輩に呼ばれたのは同じくお弁当担当の長次先輩。
無言ですっとバックから取り出したお弁当の箱をシートの中央へと置いて蓋を開けると皆からおお!と声が上がる。
それもその筈、三段の重箱にはちらし寿司、巻物といなり寿司、だし巻きや小豆などのお数と見目も美しく味もきっと美味しいのだろう。
その美味しそうなお弁当を見ていると、大きな声が上がった。
「ああ!!?」
後にぁぁぁぁぁああ…と続いた声に、長次の作ったお弁当から声を発した伊作先輩を見るとその視線は手元に向いていて涙目である。
手に持っていたバスケットを覗き込むと中にはサンドイッチ。
三角や四角、丸く巻かれているものなど形や大きさは色々で、バケットやバンズなどのパンの種類も豊富だ。
また、玉子やツナ、チーズ、ハムやレタス、ソーセージやポテトなど具もいっぱいあって彩りも鮮やかで美味しそうだった。
サンドイッチの形を残しているのはほんのわずかではあったけど。
「あーあ…」
「見事にぐちゃぐちゃですね…」
ばらばらになった具とパンが入ったバスケットの中を見た俺と雷蔵兄ちゃんの感想に、伊作先輩がうつ向いていた顔を上げる。
「楊枝で止めておけばよかった…。来るのは順調だったんだけどさぁ、家出てから電車乗るまでに走って、途中一度転びかけたんだよね……」
それかなぁとこちらを見ているのに遠い目をする伊作先輩に俺と雷蔵兄ちゃんは慌ててフォローする。
「だ大丈夫だよ伊作先輩!これで好きに具を挟めるしな!」
「そうですよ善法寺先輩!どんなものでも食べればぐちゃぐちゃになりますから!!」
あれおかしいな、雷蔵兄ちゃんのはフォローになっていない。
「雷蔵の言う通り、食べれば皆一緒だ。……まあ私は長次のをもらうがな」
持ち上げて落とす、担当のない手元がフリーの仙蔵先輩は腕を組みながら伊作先輩にとどめを刺した。
ガックリとうなだれた伊作先輩に今度こそちゃんとしたフォローが入る。
「俺は伊作のサンドイッチ食べるぞ。お前の作る料理は美味いからな!あ、長次の味付けも好きだぞ」
「お前は料理だけは失敗しないからな」
伊作先輩を慰めつつ長次先輩への心配りも忘れない留三郎先輩のこういうところは格好いいと思う。
だけ、を強調した文次郎先輩も珍しく伊作先輩を誉めている。
二人の手元にはたくさんのジュースやお茶などの飲み物の入った袋。
留三郎先輩の袋にはオレンジとかブドウ、桃の甘いジュースが、文次郎先輩の袋にはコーヒーとか紅茶、緑茶やセンブリ茶などが見える。
どうして二人はこう極端なんだろうか。
因みに俺と雷蔵兄ちゃんの担当は紙コップや割り箸、紙皿などの用意だった。
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