現パロ

□チョコレートは甘い
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チョコレートは甘い
鉢竹 兄弟パロ




手渡されたそれを見て、俺は今日が何の日かを思い出した。
となると、目の前に居る女子が次に何を言うかは分かっている。


「これ……久々知君に渡して貰えないかな!お願いね、八左エ門君!!」

予想道りの言葉を口にした女子は俺の返事を聞く前に走り去ってしまった。
直接渡せばいいのに、とは思うが去年それを女子の前で言ってしまったら大多数の女子から怒られた記憶がある。
何でも、恥ずかしいからとか受け取って貰えるか分からないからとかいっぱい言い訳されて、結局兵助と勘右衛門に渡すチョコを俺に押し付けてきたのだ。



放課後には両手に抱えるぐらいに預かったチョコを、やっと届け先である兵助と勘右衛門へと渡す事が出来て息を吐く。

「いやぁ〜、毎年悪いな八左エ門!こんなにありがとう!!」

「俺からじゃねぇよ!!」

にこにこ顔の勘右衛門に突っ込んでから兵助を見ると、貰ったチョコを小さく振って耳を傾けている。
何してんだと聞けば、中身が豆腐かどうか確かめていると言われた。

「豆腐って…、今までバレンタインデーに貰ったことあんのか?」

「ない。だから毎年それを期待しているんじゃないか!!」

胸を張ってそんな事を言いつつ中身を見てがっくりしている兵助に勘右衛門が肩に手を置いた。

「兵助は真面目キャラだから豆腐は貰えないと思うよ?」

「だが、毎年ホワイトデーには豆腐を返してそれなりに豆腐好きである事をアピールしている」

「そっか、でも女の子としてはバレンタインデーにはチョコを上げたいもんなんだよ、きっと」

「そういうものか?」

「うん。それでね、…チョコ要らないなら俺にちょうだい?」

「俺が貰ったものだろう」

「そこの商店街の豆腐屋で豆腐買ってそれと交換って事でどう?」

「う〜ん…」


「お前らの話聞いてるとバレンタインの意味を聞きたくなる!!」


豆腐とチョコをくれた女子の気持ちを天秤に掛けて豆腐に傾き掛けている兵助と、お菓子がいっぱい欲しいという欲望で動いている勘右衛門に思わず声を大きくして叫ぶと二人は俺の方を向いてきた。


「え、チョコいっぱい貰える日でしょ?」

「あげた女子の気持ちはぁぁああ!?」

「ハチ、そんなのはね、10年後に可愛い思い出として他の人に話せるくらい軽いものなんだよ」

「何その擦れた反応!!?」

「だから俺は、ホワイトデーにも思い出した時にあ〜そんなの貰ったよね〜って女子が言えるように当たり障りのない物あげてるよ。飴玉とか」

「そんな所で女子の気持ちを労うな!つか飴玉かよ!?…兵助、さっき豆腐を返すとか言ってたけどマジか…?」

兵助へと顔を向けて訊くと、ああ、と何事もないように頷かれた。

「ホワイトにも掛かってるだろう」

「何上手いこと言ってるみたいな顔してんだよ!?豆腐を貰った女子の気持ちを考えて!!」

「……俺だったら狂喜する」

「あぁあああ、お前の測りで考えさせた俺が駄目なのか!?」

俺が頭を抱えて蹲ると、勘右衛門が俺の肩を掴んでまあまあ落ち着いて兵助はいつもああだからとか言って慰めてくるけど俺は勘右衛門にも呆れているんだが、それは伝わっていないようだ。
分かり易くはぁ〜と長い溜め息を吐いても、もう二人とも俺に注意は向けてはいなかった。


「因みに兵助にとってバレンタインって?」

「俺の嗜好が女子には伝わっていないと再確認する日」

「あはははは。ひどー、女子可哀想だよ〜」

なんて会話を繰り広げていて、こんな二人が女子に好かれているなんて女子は謎だと俺は思った。






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