現パロ
□あとに残る意味
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あとに残る意味
鉢竹 兄弟
俺はゆっくり隣を見ると、隣も俺の方に顔を向けていて、目が合った。
ボケっと見つめ合ったのは一瞬で、二人で一斉に笑う。
「あははははっ!!勘右衛門ひでぇ格好〜!」
「ハチだって同じだろう!それに、ハチの所為でこうなったんだからな」
「ちょっ、俺の所為じゃねぇし!!勘右衛門がよろけたのに俺が巻き込まれたんだし!」
「はぁ?ハチが転んだのに俺が巻き込まれたのっ!!」
「二人とも酷い格好だし、馬鹿だよ」
俺と勘右衛門の口喧嘩に割り込んで発せられた言葉に俺達二人はそちらへと顔を向けた。
その先には腕を組んで俺達二人を見下ろしている兵助がいて、俺は勘右衛門ともう一度目を合わせると二人で兵助の腕を引っ張ると、こちらへと引き込んだ。
驚いた兵助の顔がスローモーションで見えた後、ばっしゃーんと音と水飛沫を上げて兵助は俺達のいる川に落ちた。
「何兵助だけ助かってんの」
「不公平だよな〜」
俺と勘右衛門はにやにやと顔を合わせて笑った。
水の量はそんなに多くないので、四つん這いに着いた兵助の肘の少し下までしかない。
兵助はその肩をふるふると震わせている。
あ、これは怒ってるな、と兵助を見ていたら、体を立ち上がらせた兵助は俺に思いっきり川の水をぶっ掛けてきた。
「うわっ!?」
「よくも俺を捲きこんだな…」
「あははっ!!ハチ、ずぶ濡れー…ってわぁっ!?」
怒りの声を向けていた兵助が、ずぶ濡れの俺を笑っていた勘右衛門にも水をぶっ掛ける。
整った顔に怒りを滲ませて勘右衛門を見て笑っている。
「何笑ってんの勘ちゃん。同罪だろ」
「ちょっと酷くない!?せっかく上は濡れるの免れてたのに〜」
「自業自得だ。俺なんか、川に入った時点で全身ずぶ濡れになったよ!二人の所為でな!!」
兵助が勘右衛門に気を取られている隙に、水を掛けられたことによる衝撃から立ち直った俺は両手で川の水を汲み、怒っている兵助の顔へとぶっ掛ける。
そして俺の方を向いた兵助に、にやりと笑った。
「全身濡れてんなら、こんなの今更だよな?」
「…はーちーざーえーもーん〜〜!!」
「よくやったハチ!!ってうわぁ、何で俺も!?」
「元はと言えば、勘右衛門の所為だろっ!」
「ハチだし!!」
「…俺を…俺を巻き込むなぁぁぁぁぁぁあああああ」
「「兵助うるさいっ!!!」」
こうして俺達は、冬間近の肌寒い季節の中、川で季節外れの水浴びをする事となった。
「うわぁ〜寒い!」
「さっみぃ〜!」
「誰だよこんな時間まで水掛け続けてたの」
「兵助も最後まで水掛けてきたでしょ」
「勘ちゃんも最後まで諦めなかっただろう!」
「…なぁ」
俺が二人の再熱しそうになる話に割り込んで話し掛けると、二人して顔を向けてくる。
寒くて二の腕を擦りながら二人に提案をした。
「俺ん家行って風呂入んねぇ?」
「え、悪いよそれはっ」
「でも俺ん家ならここから直ぐだし、このままだとお前ら風邪ひくぞ」
勘右衛門が両手を突き出して首を振るので言ってやると、確かにと言って黙った。
俺の家ならここから五分も掛からないが、二人がこの川から帰るとなると十五分は掛かる。
絶対その間に風邪引くって。
正直、今ここに居るだけでも水を吸った服が体に張り付いて体温を奪っていってるように寒い。
「悪いけど、借りていいか?」
そう言ってきたのは兵助で、俺は何度も頷く。
だって動いていないとマジで寒いんだよ。
すると勘右衛門も頼むわ、と言ってきたので、俺は二人と急いで家の方に走って行った。
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