現パロ

□授業と放課後とお隣さん
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授業と放課後とお隣さん
鉢にょ竹 お隣



昼前の午前の最終時間、それもあと少しで終わりの鐘が鳴る。
竹谷の頭は既に今日の昼食へと飛んでいて、前の席の人が指されて答え終えたら次は自分に回ってくることを考えてはいない。
そういえば本日の定食のメニューはコロッケだったな、と思ったところで名前を呼ばれた。

「じゃあ、この問題で最後にしようか。次は…竹谷!前に出て解いてねー」

「へぁ!?あ、は、はいっ!」

慌てて教科書と黒板を交互に見て指された問題を見つけて、漸く立ち上がると前へと向かう。
チョークを手に持ち、問題を睨みつけるが、本日の最終問題は中々難しい様で計算式は途中で止まってしまう。
う〜んと頭を捻ってみても竹谷の脳内は次の式を導き出してくれない。


「これはね、次にアボガドロ定数をね、」

「ひっ!」

「使って求めてみようか、竹谷」

喉の奥で鳴った竹谷のか細い悲鳴は後ろに来た先生にしか聞こえなかったことだろう。
教室ではその、鉢屋先生が後ろに立ってひとつひとつ細かく教えてくれている様に見えるだろう。
しかしその大人の体格を利用した鉢屋が、竹谷の尻をスカートの上から撫でている事など誰も知らない。

「アボ、アボガドロ定、すぅ?」

「そ。今日の授業の始めにやったでしょう」

「あぅ!?」

ゆっくりと竹谷の尻を撫で回した鉢屋の手がスカートの下へと入る。
竹谷が顔を真っ赤にして俯くが、その表情は誰も見ることができないため教室には問題が解けなくて落ち込んでいる姿に見えることだろう。

振り向いてしまえば潤んだ瞳も真っ赤な顔も教室中に見られてしまう。
この状況を打開するには、竹谷が問題を解くか授業終了の鐘が鳴るのを待つかの二つだ。
後者を待っていてはこの状況は悪化していくだけなので、竹谷は自分で解くしかないのだが、考えに集中しようとすると、スカート下の指が竹谷の内股を撫でて思考を分散させるのだ。
憎らしくとも相手を睨む事のできない状況に竹谷はチョークを握り締める。


「ほら竹谷、諦めないで黒板を見て」

「……っ!は、い」

鉢屋が肩に手を置いて、それに応えるように竹谷が頭を上げて黒板を見た姿は優しく諦めないでやれば解けることを教える教師とそれに応えようと頑張る生徒の素敵な状況に教室には見えている。
実際、クラスの女子だけではなく男子からも鉢屋の株は上がっていて、女子は私も竹谷さんみたいに先生に手とり足とり教えて欲しい、なんて思っているのが何人もいる。

が、竹谷はそんな『優しい』や『素敵』とは程遠いことを教師から受けていた。
先程も竹谷と名前の所で指が強く内股を擦り、諦めないで黒板を見てでは、ゆっくりと肌を伝ってスカートの奥の方へと指が進んで行くので嫌々ながらも顔を上げるしかなかったのだった。


「せ、先生っ」

「ん?どうした?」

「やっぱり…分からない、ので、席に戻ってもいいですか…?」

「でもこれ、あと少しで解けるよ竹谷」

「ぅぅ…」

再び項垂れた竹谷は小さく唸る。
この状況が後ろに居る教室の人からは見えないからといって、必ずしも安心ではない。
教室では鉢屋の体、教卓と二つの壁に隠されてはいるが、両サイドはガラ空きである。
外窓の方は三階なので覗かれる心配はない、しかし、廊下側の窓やドア窓は、午前最後の授業ということで早めに終わったクラスがいつ来るか分からない。
そこで覗かれでもしたら一発でアウトだ。

「せんせ…」

本当に勘弁してくれと言葉に込めた思いは思わぬところで拾われる。
規則的な鐘の音に、ばっと顔を上げた竹谷とスカート下から鉢屋が手を引いて竹谷から離れたのは同時であった。
そして離れた体が小さく舌打ちしたのを竹谷は聞き逃さなかった。


「はいじゃあ、竹谷の解けなかった問題を明日までの宿題ねー」

起立、礼、と日直の号令で授業は終了し、竹谷が席に戻って色々な疲れから脱力していると教室を出ようとしていた鉢屋に呼ばれる。

「あ、そうそう。竹谷は問題解けなかったから、今日の放課後私の所に来て明日の実験の準備の手伝いをしてね」

「はぁっ?」

「大丈夫、2、30分ぐらいで終わると思うからそんなに時間取らないよー」

じゃあよろしく、と言い残して鉢屋が去って行くのを竹谷はただ呆然と見送った。
無理矢理取りつけられた約束に気付いた竹谷は、頭を抱えて机へと突っ伏したのだった。






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