頂*捧*企

□だって、貴方は恋人だから
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だって、貴方は恋人だから
鉢竹←兵

15000Hit みぞれ様へ

※兵助が報われない



唇が触れる寸前に、声に止められた。
のろのろとその方を見れば珍しくも怒りの色を滲ませて戸口へと佇んでいて、竹谷は其方へと笑みを向ける。
すると表情は更に不快なものへとなって竹谷に返ってくる。

「さぶろー」

名前を呼んでも変わらない表情に、竹谷はもう一度繰り返すが相手の反応は変わらない。
焦れったくなって起き上がろうと体を起こしたところで、竹谷の上に覆っている人物が居ることを思い出した。


「へーすけ、重い」

告げると兵助はその場から離れて布団の横へと腰を下ろす。
その顔は僅かに気まずそうにしていて、竹谷はこてんと首をかしげた。
静寂だったのはその時だけで、兵助が三郎へと言葉を向ける。

「そういう訳だから、三郎はここに居なくていいぞ」

すっと空気が冷えた様な気がしてぶるりと竹谷が身を震わすと、兵助が竹谷を寝所へとまた寝かせその上から布団を掛ける。
寒かったから有り難いと兵助に礼を言うと嬉しそうな顔が頷いた。

布団を被ったはずなのに部屋の空気は冷える一方で、回らない頭で何故かと考えて戸口が開いたままなのだと其方へ目を向けると、空気なんかよりもっと冷えた瞳に睨まれた。
三郎が竹谷の視線を受けて戸を閉めて部屋へと入る。
兵助が煩わしそうに眉を寄せたが、竹谷からは見えず、見えていた三郎は気にする様子を見せず顔も何時もの表情へと戻っていた。


「馬鹿は風邪引かないと聞いたがな」

兵助の左横へと掻けて竹谷の顔を覗き込みながら言う三郎に、竹谷は口を尖らせた。
その顔に、ふっと口元だけ笑って竹谷の額へと手を寄せると兵助がそれを制止するように声を発する。

「さっき俺が熱測ったからいいよ」

「…そうか、で?熱は?」

「大分高いみたいだ」

二人とも声は正常であるのに、流れる空気は非常に冷たい。
熱の高い竹谷にはそんな部屋の中の雰囲気などを気にすることなど出来なく、竹谷が三郎の手に触れるとそれを握る。

「やっぱり三郎の手は冷たいな」

「お前はこういう時ばっかりだな」

竹谷に触れられた瞬間には兵助から目を離して竹谷の方へと向いた三郎の顔は呆れていたが、嬉しそうでもあった。
気持ちいなぁと呟いて目を瞑る竹谷に、先程の兵助との会話など無かったかのように額へと空いた掌を当てる。


「…熱、高いな」

「んんー…、何時もより辛い?」

「何で疑問形何だよ」

「俺良くわかんねぇもん」

忍者として自分の体調管理ができないのはどうなんだと三郎が言うと、竹谷は頬を膨らませた。
しかし三郎の言葉は尤もで、何も言い返せずに竹谷が瞳を彷徨わせれば兵助の視線にぶつかった。

「兵助?」

「…ん?」

「どうしたんだ…?静かだけど」

「いや……、はっちゃん辛そうだなーって思ってただけだよ」

「そうか?俺は大丈夫だけど」

兵助へと笑って見せた竹谷に、兵助は口の端を僅かに歪ませた。
大丈夫な訳がないのだ、熱は高く、先程目を覚ますまでは魘されていた。
でも兵助の前では大丈夫だと言って笑みを向ける。
弱っているところも、甘える姿も見せてはくれない。
この部屋に竹谷と兵助以外のそれらを簡単に引き出してしまうもう一人の存在がとても羨ましくて、憎らしい。


「…ちょっと濡れ手拭い作ってくるね」

この場にいると落ちていく心に歯止めが利かなくなりそうで、兵助は口早に言うと立ちあがって部屋を出る。
熱で擦れた竹谷のありがとうと言う声が兵助には辛かった。





「……ハチ」

兵助の足音が遠のいて行くのに耳を傾けていた竹谷に三郎は抑揚のない声を向ける。
その声に何を感じ取ったか、びくりと大袈裟に体を震わせてゆっくりと視線を三郎に合わせてくる。
三郎は竹谷が此方を見たのを確認すると口を弧に描いて問い掛けた。


「さっきのは、どういうことだ?」

「…さっ、きの?」

ごくりと喉を下しても声を詰まらせた竹谷は、記憶を思い返してみるも、熱でぼやけた頭は上手く働かない。
それに焦れた三郎が先程の兵助の様に竹谷へと覆い、その顔を覗き込む。

「さぶろ?」

「お前、こうやって兵助と口吸いしようとしてただろ」

「はぁっ!?」

三郎の言葉に竹谷が重い体を推して起き上がろうとしたが、三郎が手を両肩に掛けて布団へと体を押さえ付けた。
ゆっくりと瞬きをする三郎の目は怒っていた。

「口吸いなんて、しようとしてねーし」

「あの状況でそんなの信じられるか」

むっとした表情で告げる三郎を竹谷は宥めるように肩に掛かっているその手を握った。
部屋に入って来た三郎を見た時と同じ笑みを向ける竹谷に、三郎は肩に掛けていた手の圧を解いて放そうとしたが、握られた手は竹谷に繋がれたままだ。


「あれは兵助が風邪貰ってくれるって言うから…」

「ほう。それで私以外の者と口吸いしようとするとは、軽いもんだなハチは」

「だから口吸いじゃねーって」

弱々しい声ながらも否定するのは変わらなくて、どこが違うのかと声に出さずして問うと、竹谷は当然とばかりに答えた。

「愛がねぇもん」

「……やっぱ、お前は馬鹿だな」

竹谷の言葉についに溜め息を漏らして呆れてみせた三郎は、びしっと額にでこぴんを喰らわせる。
例え竹谷側に無かったとしても、相手側にあるのを知っている三郎にはそれはただの口吸いでしかないのだ。
しかし、只でさえ鈍い竹谷にそれが分かる筈もなく、熱で判断のつかないところを兵助に乗せられたのなら竹谷を強く責められはしない。

「ハチがそう言うのなら、私が熱を出した時に兵助や勘右衛門にうつしてもいいって事になるな」

「それは嫌だっ」

意地悪くもそう言った三郎に竹谷は直ぐに答えて握る手に力を込める。
三郎は緩やかにその拘束を解くと竹谷の両頬に手を当てた。

「何でだ?ハチが言うようにそこに愛はないぞ?」

「そ、そうだけどっ。でも、…俺が嫌だ!」

嫌なんだと小さく呟いた竹谷は首を振ってそのことへの抵抗を示す。
その頬を放さずに顔を少しだけ近付けた三郎は、真剣な視線を竹谷に合わせた。

「それと同じだ。愛がなくても、私がハチが他の奴と口を合わす事が気分がいいとでも思っているのか?」

「っ!…………ごめんなさい」

熱で涙腺が緩くなったのかじわりと涙を滲ませた竹谷は反省しているようで、流石に病人にそれ以上苛める訳にもいかない。

「分かったらいい。でも、二度とすんなよ。うつすなら私にうつせ」

「…それはできない」

返される言葉に眉根を寄せて竹谷を見れば、真剣な顔で三郎を見ていた。

「それはやだ。お前にはうつしたくない」

「兵助にはうつせるのに、か?」

またじわじわと三郎の声が下がっていくのと怒りが上がってくるのが分かっても竹谷はその言葉を否定する事はなかった。
先程の怒っている時と表情を変わらなくした三郎は、もう一度どういうことだと竹谷へと問い掛けた。

「だって、お前が辛くなるじゃねぇか」

看病するのは嫌いじゃないけど辛そうな三郎を見たくないと続けた竹谷に三郎は二度目の溜め息を吐く。

「馬鹿者め」

「んっ…!」

ゆっくり唇を合わせて、驚きで薄く開いた唇に舌を入れて熱い口内に忍び込む。

「ぁ…はっ、ふぁ…ぁ……やぅ、っ」

口内を一巡して解放した三郎に、苦しかったのか涙を浮かべた瞳を揺らしながら大きく息をする竹谷が掴んでいた衣を引く。

「う、つっても、しらねー、ぞ」

息を切らせて言う竹谷に三郎はもう一度軽く口付けて離す。

「お前からならいいし、それに私は馬鹿だから問題ない」

「てん、さい、はちやさぶろうが、よくいう、んぅっ」

続ける言葉を封じてその唇を堪能しながら三郎は笑みが零れるのが止まらない。
愛すべき馬鹿な恋人は、この行為を風邪をうつすものだとでも思っているのか。
今まで竹谷との行為に心がなかった事など一度として無かったというのに。

「だからハチ、思う存分私にうつすせばいい」

「はぁっ…さ、ぶろう、のっ……ばぁかっ」

しってると唇の上で告げれば、竹谷は嬉しそうに笑って病人であるのを忘れたかのようにもっとと強請って三郎の首に腕を回した。





end

竹谷馬鹿なんですよね三郎は。
兵助は戸の前で桶を抱えて立っています寂しい。でも好きあらば狙ってます。


おかしいなぁもっとギャグチックな流れになる筈だったんだけど、入り方を間違えました(*_*)

ひえぴたの代わりに豆腐乗せたり、お粥の代わりに豆腐食べたり、風邪を貰ってあげるよっていいながら兵助が迫るのを三郎に殴られたりとそんな流れはどこへ行ったんだ!!
書きたかったことが伝わりにくい挙句に、重要な所が短いとか馬鹿は私でしたすみません。

あと、久々知がかわいそすぎた…(;´д`)
久々知をしゃしゃり出てとの要望でしたが、とんだ当てつけ役でスミマセン!!
そんで実は竹谷は口付けとか口吸いとかとは思ってなくて、口移しだと思ってます。
雛が親鳥に餌を貰うのと変わらないとか久々知とのことは思ってます未遂ですが。
報われません、気付いてもらえません。

その代わり三郎も竹谷とくっ付くには苦労しました。
それで、許して、くれません…か…。


end以上をみぞれ様のみお持ち帰りOKです。

みぞれ様、リクエストありがとうございました。
そして本当にすみませんでした!!
不満がありましたら言ってください、返品OKです!

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