頂*捧*企

□全て一色に染まればいい
1ページ/1ページ

全て一色に染まればいい
鉢竹

9999Hit リクエスト 鯨様へ




授業の終わりと共に教室へと来た木下に呼ばれた竹谷を目で追って見ていた三郎は、自分の心に小さく気合いを入れた。

顔を寄せて話しているのは、教室内や廊下が騒がしいからで他意はない。
木下が珍しく笑顔を向けていて、それに竹谷が嬉しそうに笑顔で何やら答えているのは委員会関連のことであろうから他意はない。

暫く話しをして、木下に何か言われた竹谷が一瞬此方へ目線を向けた瞳が申し訳なさそうなのは気の所為でと自分に言い聞かせ、木下へと頷いた竹谷の頭に木下が頭を撫でたところで三郎の小さな気合いは崩れ去り席を立つ。
直ぐ様でも木下の手を払い除けに行きそうな三郎を止めたのは、竹谷が呼ばれてから席を立った時から三郎の横に居た雷蔵だった。


「三郎」

静かな声に腕を握られて、我に返った様に雷蔵を見つめる三郎は身体の力を抜く事で落ち着いたことを雷蔵に伝える。
手を離されて再び席へと着いた三郎は常と変らぬ表情に戻っていた。
先程の一瞬で三郎が垣間見せた殺気に気付けた人間が教室に何人いるか、ただ、木下には感づかれているだろう。

平素へと戻った三郎だが竹谷が居る方へ視線を向けることはがない。
器用なのに不器用、と呆れた溜め息をついた雷蔵が木下を見遣ると、木下も此方を、正確には三郎を見ており、同じく呆れた顔をしていた。
その前にいる竹谷は視線を合わせる雷蔵と木下を交互に見て首を傾げている。


そんな竹谷の様子に、これは三郎も苦労する、と微かに同情的な視線を三郎に向けた。

「あ。ハチ、話し終わったみたいだよ」

「そうか」

三郎と雷蔵の方へと足を向けている竹谷の事を教えてみれば、三郎はそっけない返事をするだけだ。
少しだけ心配そうに竹谷を見ていた木下に雷蔵が軽く会釈をすると、後は頼んだと瞳で告げられ行ってしまう。

雷蔵が竹谷へ視線を戻す頃には三郎も竹谷へと視線を向けていた。
それは真っ直ぐと、向けていた。

竹谷はどこか申し訳なさそうに三郎を見て頭を掻いている。
先程見ていた竹谷と木下の流れで、竹谷が三郎に何を言いたいかを想像するは容易い事だったが三郎から促す事はなく、竹谷の言葉を待つ。


「あー……、悪い。明日一緒に町に行けなくなった…んだけど」

「そうか」

目を彷徨わせながらも何とか告げた言葉に、三郎は短く返事をし目を伏せるだけだ。

「じゃあ私、次の授業の準備があるから」

先に行く、と席を立つ三郎にもっと怒られて何事か言われると思っていた竹谷は気の抜けた顔でそれを見送る。
不思議そうに三郎の去った方を見る竹谷にそれまで何も言わずに成り行きを見ていた雷蔵が声を掛ける。

「三郎の奴どうしたんだ…?」

「ハチ、三郎を今すぐ追って」

「え…?」

「三郎は直ぐに自分の中に溜めこんで何も言わないけど、言いたい事も訊きたい事も沢山あるんだよ。だからハチ追って!恋人でしょう!」

雷蔵が少し焦って告げてくる様子に驚いていて訳が分からない様な顔をしていた竹谷だが、最後の言葉を聞くと顔を引き締める。

「俺が行かなきゃなんないんだな」

「うん、ハチじゃないと駄目なんだ」

雷蔵の真剣な顔を見てそれに背を向けて数歩行ってから足を止めて振り返る。


「…悔しいな。三郎のことは雷蔵が一番分かってる……。けど、負けないからな!」

苦笑していた顔を笑顔に戻して雷蔵に宣言すると、今度は振り返らずに三郎を追った。
それを見送った雷蔵が今度は苦笑する番だ。


「確かに僕が一番三郎を知っているけど、僕の知らない三郎を一番知っているのはハチだよ。…それに、ハチの事を一番分かってるのは三郎なんだから」

それで十分でしょ、そう呟いた言葉は誰にも聞かれる事なく教室の喧騒の中消えて行った。






「三郎ーーー!!」

「うぉっ!?」

教材を抱えて人気のない廊下を歩いていた三郎の背に竹谷は跳び込んだ。
咄嗟に受け身を取った三郎は教材を投げ出して竹谷を受け止める形になる、つまりは竹谷に廊下に押し倒されていた。

「ハ、ハチ」

「三郎!!明日の約束破ったことを怒っているのか?急なことで悪いと思ってるけど、ちゃんと怒ってるなら言ってくれよ!謝る事も出来ないだろ、それに雷蔵に――」

どさっと音がしたかと思うと視点が変わっていた。
三郎が竹谷の手を取り体勢を逆転したのだ、そうして下から見上げた三郎は怒っていた。
怒っている様に、竹谷には見えた。

「わ、悪いっ!でも、明日しか卸業者が港に来て自分で見て覚える機会はないって木下先生がおっ、しゃっ…って……っ」

怒っていた三郎の目が更に鋭さを増し、流石に至近距離で放たれる殺気に竹谷も気付き声が引きつり言葉が詰まる。
怖いのに三郎の琥珀色の瞳がやけに輝いて見えるから綺麗だと思い、竹谷は慌てて自分の考えを否定した。
こんな状況でそんな事を三郎に言えば怒られる、どころでは済まなくなる。

「さ、三郎っ」

表情は変わらないまま顔を少しずつ近付けられて、竹谷が焦ってそれを制止しようと手を動かそうと試みてみたがいつの間にか三郎によって廊下へと縫い付けられていた。
もう少しで唇が触れ合う、という所で動きを止めた三郎に目も瞑る事も出来ずに視線を合わせていた竹谷に三郎は漸く言葉を掛ける。


「何で私が怒ってるか、分からないのか」

「は…?え、あの、急に明日の用事を入れたこと…?」

「違う」

じゃあ何だ、と考えを巡らせてみても最近で三郎を怒らせた事に当て嵌まるものはなく、やはり突然の予定の変更に思えた。

「お前は本当に馬鹿で鈍感だな」

「はぁ!!?」

じっくりと自分の非を見つめていた時に掛けられた言葉に竹谷は三郎を睨んだ。
睨んで、呆けてしまう。

三郎は何か可愛いものや愛おしい物を見るみたいに優しい目をしていて、そんなのは恋仲になる時に向けられた時以来だった。
何故この状況でなのか、なんて竹谷が頭が回る筈もなく呆けていたら三郎が僅かにあった隙間を埋めるように顔を寄せて来た。

ゆっくり目を閉じると同時に唇に温かい感触が重なった。
重なるだけで終わったそれに竹谷が目を開けると、三郎の左手が伸びてきて目を覆って視界を塞ぐ。
その状況に動けずにいると竹谷の左耳に三郎の吐息が掛かった。



「お前は、もっと私のものであると言うことを自覚しろ」



告げられ、序にと耳朶を甘噛みされて離れた三郎の身体と手に視界と拘束されていた身体が解放される。
身体を起こした竹谷が三郎を見るともう教材を拾い終えていて、ちゃっかりと半分竹谷に渡してきた。
成すがままにそれを受け取って三郎の顔を見ると普段と変わらぬ飄々とした顔。

何だかよく分からないけど、三郎を怒らすと自分の身も危険だと何となく察知した竹谷は三郎に言われた言葉を改めて考えてみる事にしたのだった。







end

鯨様、リクエストありがとうございました〜(≧∀≦)
嫉妬する三郎とそれに気付かない竹谷。と頂いたんですが御希望に添えたでしょうか。
いや、添えてないですよね!スミマセン。

雷蔵出演ご希望とのことでしたが、もしかしたら嫉妬する対象が雷蔵だったりしますかね(^o^;)
三郎が雷蔵に嫉妬するというのも大好物ですよ私!!
あれですよね、普段雷蔵にべったりのくせに竹谷が雷蔵に抱きついたりするとお前ふざけんなよ雷蔵に抱きつくなら全く同じに変装している私に抱き付けとかそんな感じですよね!
お前に関わるやつ全員に私が変装してやるから!みたいな感じですよね!


そんなシュチュもいいなぁ(*^^*)
でも何を血迷ったか今回は木下先生なんですよね……なんでだろ。

木…嫉妬←鉢竹→嫉妬…雷蔵

とかそんな!!
雷蔵さんは寂しいだけです、子供が親離れするのをしみじみと感じております。
本当は雷蔵さんの呟きまでだったんですけど、鉢竹要素皆無!?な状況にガクブルになりまして付け足してみましたら、やったら長い文になりました( ̄▽ ̄;)アレ


二人の関係はまだ付き合いだして間もない感じです。
そんで三郎はまだまだ独占欲丸出しですが、竹谷君は気付いてなくしかもそれが可愛いとか少し思ってる状態です。
でも竹谷君をだれにも渡すつもりはありません、教師にまで嫉妬しちゃってますしね!

こうして説明ないと意味分からない文って……(;_;)


視点が変わりまくって読みにくくてすみません!
end以上より鯨様のみお持ち帰りOKです。
返却、書き直し可ですのでいつでもどうぞ!

楽しく書かせていただきました!鯨様ありがとうございます!!

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ